「季節は確実に進み、それぞれの季節に、それぞれの美しさと、やるべき仕事がある」。アメリカの絵本作家、ターシャ・テューダーが残した言葉だ。毎年繰り返す季節の流れは人々に感動を与え、寒暖差は作物の味方となる。日本もそうであった

▼残暑が厳しいはずの9月に、長雨が続いた。秋風に誘われながら物思いにふける、そんな秋の気配は、まるで梅雨のように降り続く雨音にかき消されてしまったかのようだ

▼降りしきる長雨はやがて豪雨へと変わり、河川は氾濫した。大洪水で残念ながら奪われた命もある

▼こうした異常事態を目の前にしない限り、私たちはあまり上空のことを気にかけない。雨の降り始めや夕暮れ時、あるいは星が輝いている時には空を見上げる人もいるだろう。しかし、私たちの注意と関心は自身の周囲、最近ではもっぱら手に握りしめたデジタル機器に注がれている

▼だが視界を広げ、空を気にかけてみると、自然の変化に気づくはずだ。季節の崩れは、いまや看過できないところまできていることに

▼今月20日は空の日だ。目線を上げて季節を感じて欲しい。その空はあなたの記憶にある風景とはきっと少し違う。
(岩田なな子)