人々を魅了し続ける動物写真 写真家・星野道夫氏の足跡をたどる

アラスカで活躍した動物写真家、星野道夫氏の写真を見たことはあるだろうか。カリブーやグリズリーなど、アラスカの大型生物を主なテーマとした写真。それらははるか遠くの大自然で、今同じ時間を生きている存在についての想像を膨らませる。
1996年、ヒグマに襲われ、44歳で急去した星野氏。しかし今でも彼の写真は人々を惹きつける。昨年12月に東京ミッドタウンにて開かれた写真展は盛況。妻である星野直子氏のトークショーは満席だった。そんな写真を残した星野氏の姿を、残された書物から探った。

提供:星野直子氏

星野氏は1968年に慶應義塾高校に入学し、慶大経済学部に進学した。塾生時代、かねてから冒険好きだった星野氏は、写真集で見たアラスカのシシュマレフ村に3か月滞在して村民の仕事を手伝うなどして生活し、北方への憧れを強めた。
その後、大学3年の時に親友が遭難死する。人の弱さやもろさを実感した星野氏。「自分は取るに足りない存在に過ぎないのだ」と考えるようになり、大学は自分がいる場所ではないと思うようになったという。悩んだ末に彼が辿りついたのは、好きなことをやっていこうという思いだった。「本当にとてつもなく大きな自然に関わる仕事をしたいな、という気持ちがあったと思う。それでもう一度アラスカに戻ろうと思った」と星野氏は語っていた(「終わりのない旅 星野道夫インタヴュー」スイッチ・パブリッシング2006年)。そこで卒業後2年間動物写真家の田中光常の助手を経てアラスカ大学野生動物管理学部で4年勉強し、動物写真家となった。
やがて彼の写真は日本やアメリカなどで評価されるようになる。しかし、44歳の時。悲劇はテレビ番組の取材同行の際に起きた。
星野氏は生涯、アラスカを最後のフロンティアと呼んで愛した。世界は広い、まだすべてを見てはいない。「心の白地図」を持ち続け、懸命に写真を撮り続けた、星野氏の姿は、今の時代にも人々を魅了し続ける。
次号では妻の星野直子氏にお話を伺う予定。
(佐藤万貴)