
競技かるたに青春をかける高校生たちの姿を描く『ちはやふる』の映画化などをきっかけに、近年「かるた」に注目が集まっている。慶大にも「競技かるた」に真剣に取り組む学生たちがいる。今回は、慶大唯一のかるたサークルである「かるた会」に所属する石井さん(学生責任者)(文3)、倉掛さん(理工3)、宮原さん(法2)の3名に、活動内容や競技かるたの魅力について話を聞いた。
●暗記力・瞬発力が勝利の鍵
−かるた会の活動について教えて頂きたいです
日吉キャンパス食堂棟3階和室で練習しています。基本的に試合形式の練習を1日中行っていて、会員は自分のスケジュールに合わせて、来られるタイミングで練習を行なっています。ある程度試合に慣れてきた後は、級ごとの個人戦や団体戦に出場し、昇級を目指します。
−競技かるたのルールについて教えて頂きたいです
百人一首には上の句(5・7・5)と下の句(7・7)に分かれており、下の句のみが書かれた100枚の札の中から無作為に選んだ50枚を、敵陣自陣に25枚ずつ並べます。敵陣の札を取ると自陣から1枚送ることができ、最終的に自陣を無くした方が勝ちます。場所を暗記して瞬時に判断することが求められるため、暗記力・瞬発力が鍵になります。
●習熟度に応じたサポート体制
−年間でどのくらい大会に出場されているのか教えてください。
級ごとに試合が全国で行われており、年間でかなり多くの試合に参加しています。会員の中には全国各地で行われている試合に参加している人もいます。
−かなりの頻度で大会に出場されており、かつ優秀な成績を残されていますが、初心者が多い中でも優秀な成績をとる工夫を教えてください。
石井さん)「かるた会」では初心者指導のやり方が確立されており、初心者は簡単な札の払い方など基礎的なことから教えていき、慣れてきたら試合に参加してもらうようにしています。未経験の方でも安心して始められるような環境が整備されていると思います。
倉掛さん)私は大学から始めましたが、1日中練習を行うことも出来ますし、強い先輩も多いので良い指導を受けられるなど環境が整っているところだと思います。
宮原さん)私も大学から始めたのですが、所属している方のレベルが幅広く、日本屈指の実力者も居れば、始めたばかりの初心者もいます。自分のレベルも把握しやすいですし、各々の習熟度に応じたサポート体制が、整えられている点がいいと思います。
●突き詰めたくなる奥深さ
−活動される中で大変だったことについて教えてください。
石井さん)昇級という制度が大変だと思います。実力があっても試合で勝てないとなかなか級が上がらないということもあります。
倉掛さん)膝が痛くなることもあるので、サポーターを使いながら試合を行うこともあります。
宮原さん)動画などで上手な人の取りを見て、理解したつもりでも、実際に自分でやってみると全然うまくいかないことがあります。動きや札を払うタイミングを再現することは想像以上に難しいです。また、かるた会では敵陣を攻めることも目指していますが、自分が狙いたい札が読まれなかったりと、想定した通りには展開しないこともあります。優勢でも逆転されることもあります。色々と課題は見えてきますが、それを改善するのも大変です。
−競技かるたの魅力について教えていただきたいです。
宮原さん)「かるた」は割とマイナーな競技だと思うのですが、1回かるたの世界に入ってみると、すごく奥が深いということに気づきます。ルールは簡単ですが、スピードだけでなく手の出し方など、考えれば考えるほど、新たな気づきがあり、終わりがありません。
また、基本的には男女関係なく大会でも対戦します。体格などの個々の違いを上手く活かすことで自分のかるたを追求できる点も魅力だと思います。
倉掛さん)かるたは札の場所を覚えて、音を聞いて、体を動かして札を取る競技です。頭も使いますし、体も動かすので、テストでいい点が取れた時のような喜びもありますし、札を払った時の爽快感もあります。また、経験や練習量が増えるにつれて楽しくなるのもまさに終わりのない魅力の1つです。
石井さん)私は小6からかるたをやっていて、一度やめてから大学入学前に再開したのですが、時期によって感じるかるたの魅力が違います。小中学生の時は、札を取るスピードとその美しさに魅了され、タイミングぴったりで敵陣を抜いた時の爽快感がサッカーでゴールを決めたような気分になり好きでした。再開してからは、暗記や送り札、札の配置や手の出し方など、頭を使う部分が面白いと感じるようになりました。
●楽しみながらも、かるた界を牽引する団体に
−学部構成について教えてください。
かるた会には、医学部と総合政策学部を除く全ての学部の塾生が在籍しているなど、文理問わず全学部の塾生が所属しています。
−「かるた会」の卒業生には名人など現役で活躍されている方がいるとお聞きしました。それにあたってOBOGとの交流についてください。
練習に来られる方は少ないのですが、たまにOBOGが来られます。
毎年開催しているOBOG交流会では、以前第一線で活躍していたOBOGと現役生が試合を行ったりしています。
−「かるた会」様の今後の展望について教えてください。
会員が70人近くいるため、全員含めた展望と言うと非常に難しいのですが…笑
まず、戦績面においては、現在4連覇している大学選手権での5連覇、そして昨年度あと一歩届かずだった職域大会という団体戦での優勝です。
会の活動としては、今年は、日本トップクラスの選手が慶應に新しく入学してきたり、ちはやふるのドラマが新しく始まったりすることもあり、対外的な活動も増えると予想しています。それらを積極的に受け入れかるたの魅力をアピールすることで、競技かるたの普及に少しでも協力したいと考えています。また、かるた会を牽引する早大や東大との交流や大会の役員なども積極的に行い、今後のかるた界を牽引する会員が増えればいいなと思っています。
とはいえ、多くの会員の目下の目標は昇級や後輩の育成だと思います…笑 なかなかシビアな世界ではあるので、個人的には、無理をせず初心を忘れず、会員全員がかるたを楽しんでもらえればと思っています。
●0.01秒の世界への誘い
−新入生へのメッセージ
ご入学おめでとうございます!「ちはやふる」で見たことある人も多いかもしれませんが、かるたは実際にやってみると100倍楽しめる競技だと思います。かるた会は初心者指導の関係で5月末で会員募集をやめてしまう予定なのですが、来年以降2年生以上でも入会できますし熱意があれば5月中でも間に合います!
青春は、高校で終わりじゃありません。私たちと一緒に、0.01秒の世界の面白さを体感しませんか?
●級について
競技かるたでは、A〜E級で強さを分類しており、A級が最上級で、順番にB級、C級、D級、E級となる。試合はトーナメント制で上位になると、昇級することができる。またD級以上からは、試合の結果によって「段」の認定を受けることができ、例えばD級の試合で3位以上の場合は「2段」の認定を受けることが出来る。特にA級以上は「段」によって強さを表す。
「かるた会」は文系だけでなく、理系の学生も多く所属している。大学でなにかに打ち込みたいと考えている新入生は、足を運んでみてはいかがだろうか。

(大世古葵)