慶大屈指の演劇サークル・創像工房in front of.の最新作『歓声喝采!ネバー・ネバーランド』。本番に向け最終調整に入る彼らの稽古を覗いた。

8月中旬の某所にて、正午から男女10‌人ほどのメンバーで稽古は開始された。ストレッチで体をほぐした後、一斉に筋トレで体幹を鍛える。体幹を鍛えることはきれいな動きをすることにつながり必須なのだという。日吉の坂を全速力で走るトレーニングもあり、普段から体を鍛えている。その運動量は体育会さながらだ。

昼食を挟んで、発声や演技の練習が始まった。今回披露してもらったのは、「スロー・ストップ」と「氷エチュード」だ。「スロー・ストップ」では怒り、喜び、愛、といった感情のテーマを決めて、体全身でその感情を表したポーズをとる。一つの感情でとるポーズの数は12回にも及ぶという。寝転んだり、頭を抱えたり、飛び跳ねたり、それぞれが一斉に思い思いのポーズを決める。見ている残りのメンバーは様々なアドバイスを送る。足の開き方、手の位置、指先から顔の角度まで指示は細かい。表情では目線の振り方から口角、眉間までリアルな心情表現を目指す。キャストは恥を捨て本気で演じ、それに演出は真っ向から指摘を与える。

「氷エチュード」では2人が即興劇を演じ、他のメンバーの手拍子を合図に静止する。その2人のポーズから全く違う場面や登場人物を3人目が想像し、片方の人と交代し即興劇を再開するというのを繰り返す。演技のレベルの高さが求められる。ダンス会場、痴漢現場といった次々に変化する場面設定はどれもユニークだ。ポーズが何を意味するか瞬時に判断する想像力と、途中で止められても対応できるように動作の全工程を意識することがこの練習の狙いだという。

今回の脚本演出を手掛ける鴇田哲実さん(理3)は「映画とは違い生身の人間の熱量を間近に感じられるのが演劇の武器」と熱く語った。今作品では、衣装や舞台、受け付けからチラシまでカラフルな演出にこだわったという。来場者は足を踏み入れるだけでテーマパークの様な空間を感じることができる。劇のテーマは「大人と子供の違い」だ。就活を終え来年から社会人となる4年生、これから就活を迎える3年生に特に見てほしいという。

メンバーが一丸となって作り上げる芸術作品。そこには塾生たちの「本気」があった。
(笠原健生)