慶大が5月15日に発表した生成AI利用方針に表現を加えるかたちで、学部独自の利用方針が示されている。法学部は6月8日に、SFCは7月4日に方針を示した。両学部関係者に意図を尋ねる。

 

法学部は原則禁止 担当者が許可すれば条件付き可

法学部が6月8日に示した独自の利用方針では、レポート作成時の利用を原則禁止とした。ただし、科目担当者が許可した場合は、指示に従いながら、どの部分でどう利用したかの明記を条件に利用を認める。

決定の意図について、堤林法学部長と大久保日吉主任が塾生新聞の質問に回答した。

 

原則禁止とした理由は

「これまでのレポート課題は原則として個々の学生の実力を評価するためのものであり、独力で内容を完成させることを前提としていた。生成AI を利用してレポートの文章を作ることは他者の助力を得ることと同じ意味を持ち、前提に反するとの判断による。もっとも、科目の性質や課題の趣旨によって学生らが協力してのレポート作成が期待される場合もあり、担当教員が許容する場合まで利用を禁止する趣旨ではない」

 

決定までにされた議論は

「レポートの趣旨に関する理解は学部の教員間でかなり共有されており、担当教員の自主的な判断を尊重する内容でもあるので、ほぼ異論なく同意が得られている。単に禁止するのではなく教育的な効果を考慮して利活用の方法を検討すべきという人工知能学会からのメッセージも参照している」

 

決定で重視した観点は

「生成AIという技術は魅力的だが、法廷や議会が典型的であるように、 法学部で教育を受けた者の活躍が期待されている場面には、一人の人間として外部からの支援なく問題に立ち向かう必要のある局面がある。利便性の高い技術を使えるときに使うこと否定する必要はないが、そうした場合でも実力を遺憾なく発揮できる人材の育成が重要という観点を最も重視した」

 

SFCは活用促す

SFC(総合政策学部・環境情報学部)が7月4日に示した独自の利用方針では、活用を促す文言が含まれる。

湘南藤沢事務室学事担当は、「まずは使ってほしいという意図がある。生成AIをめぐる情勢の変化は目まぐるしく、使わざるをえない時代が迫っている。積極的に活用して、何が出来るのか、正しくない使い方は何かといったことを、自ら考えてほしい」と語る。同時に、個人情報の扱いには警鐘を鳴らす。「チャットGPTは、ユーザーの入力した情報を学習して、同じ情報を別のユーザーに示してしまう恐れがある。個人情報や機密情報の扱いには厳重に注意してほしい」

 

SFC利用方針(抜粋)

「まだ生成AIに触れたことがなければ、まずは生成AIを自身の手で使ってみてください。生成AIでどのようなことができるか、あるいはできないのかを確かめてください。実際に使用して自身の考えを持つことが、なぜ議論を呼んでいるのかを理解する第一歩となります」

(和田幸栞)