6月、慶大は23卒の就職先データを公開した。上位には金融保険業、コンサルなどの専門・技術サービス業、情報通信業の企業が名を連ね、例年通りの傾向をみせる。

他方、23卒は大学2年次から卒業までコロナ禍を経験した世代だ。三田学生部就活・進路支援担当のスタッフは、コミュニケーション力を磨く機会が失われていたと分析する。

 

人気業界の3トップには、金融・保険業、学術研究・専門・技術サービス業、情報通信業が並び、例年通りの傾向となった。

全学部・研究科の上位就職先は2位がアクセンチュア(86人。学術研究・専門・技術サービス業)、3位が楽天グループ、4位がNTTデータ(79人、75人。ともに情報通信業)、5位が野村総合研究所(70人。金融・保険業)となり、人気業界の企業が上位を占めた。

その他、就職者が50人以上の企業はPwCコンサルティング合同会社(69人)、リクルート(67人)、有限責任監査法人トーマツ(61人)、EYストラテジー・アンド・コンサルティング(60人)、デトロイトトーマツコンサルティング合同会社、東京海上日動火災保険(ともに58人)、日本アイ・ビー・エム、みずほ銀行、三井住友信託銀行(ともに55人)、富士通(52人)、ベイカレント・コンサルティング(50人)。

理系では大学院で磨いた専門性を活用できる製造業の人気が高い。男女の業界傾向は、2017年ごろからほとんど差がない。

 

コロナ禍でコミュニケーションに苦戦も多く

 

23卒は、大学2年次から卒業までコロナ禍を経験した世代だ。就活への影響は大きい。

八木氏は「コミュニケーション力を磨く機会が失われてしまった。対話・議論の力を求められる場面で苦戦していた就活生が多い印象。いわゆるガクチカに自信を持つ人も減ったのでは」と分析する。

ただ、企業側も学生への配慮として、高校時代の取り組みやコロナ禍ならではの工夫をガクチカとして評価することもあった。

他方、説明会や面接のオンライン化がコロナ後も定着するなど、就活生に有利な変化が残った。時間と交通費をかけて会場に赴く必要がなくなり、就活生への負担は減った。

就職活動中の25卒は、サマーインターンシップ(以下インターン)への参加が欠かせない。2022年4月に産学協議会が示した新定義により、単日のような短期のインターンはなくなった。八木氏は、「もし選考に落ちても、企業説明会などの短期イベントに参加するとよい。就活だけでなく、プレゼン力や質問力など、今後の大学生活に活かせる学びが得られることもある」とした。

就活の早期化が進み、焦りや不安を感じている低学年も多い。八木氏は、「本格的な就活対策というより、情報収集や自己分析を早めに始めておくとよい。他方、インターンはあくまで就業体験。インターンで得られることは就職し社会人になってからでも学べる。低学年こそ学生時代にしかできない経験を。学生生活で様々な人と関わることが、自身の本質的な成長、ひいては選考での高評価にもつながる」と話した。

 

山浦凜