【喊声】6月号

先月、秋葉原の歩行者天国を再開する方向で地元が合意したとの報道があった。早ければ7月下旬にも再開する見込みだという▼「ホコ天」と呼ばれ、親しまれてきた歩行者天国。中止のきっかけは、一昨年の無差別殺傷事件だった▼日曜日の昼過ぎ、買い物客で賑わう「ホコ天」の交差点にトラックが突っ込んだ。運転手の男は車を降りた後も次々と通行人を刺し、17人が死傷する大惨事となった▼「孤独」「派遣社員」「落ちこぼれ」――事件後、明らかにされた男の境遇に多くの若者が共感を寄せたという。しかし、ほとんどの塾生はおよそ無縁と感じたのではないか▼村上春樹氏は地下鉄サリン事件について「『こちら側』(一般市民)と『あちら側』(オウム真理教)は、一種の合わせ鏡的な像を共有していたのではないか」と著書『アンダーグラウンド』で述べた。「あちら側」を理解不能なものとして目を背けるのではなく、「こちら側」がなぜ目を背けるのか問う必要がある。これは本事件にも通じるように思う▼秋葉原の安全を象徴する「ホコ天」再開が決まった今こそ、刃物を振りかざした男と同じ社会に暮らす者として事件を見つめ直したい。
(西原舞)