ミツメ。慶大卒の4人によって結成された、インディーズロックバンドである。現在、東京で活動するバンドとして、着実に、そして急速に支持を集めている。果たして彼らは慶大入学から今に至るまで、どのような道を歩んできたのだろうか。
 
慶大入学前は、メンバーの多くが何らかの形で音楽活動を行っていたが、必ずしも精力的ではなかったという。入学後4人は同じサークルに入り、バンド活動に励むこととなった。
 
「サークルに入ったことで、友達や先輩から色々な音楽を教わり、吸収することが出来たように思います。活動を続ける中で、何となく音楽の趣味が合って、よくバンドを組むような4人、というのが出来てきました。それが今の『ミツメ』の原型になった感じですね」。その一方、大学では単位の取得に苦労するなど、普段の大学生活は決して「模範的」ではなかったと4人は話す。
 
やがて4年生となり、将来の進路を定めることを迫られた4人は、なぜバンド活動を続けていくという結論を出したのか。実は彼らには「音楽で生きていく」といった強い思いはなかったそうだ。
 
「逆にそのような強い思いがあったら、ここまで来てなかったような気もします。ただ、音楽を続けたい、やめたくない、という思いはありました」。当時、リーマン・ショックの影響で就職氷河期だったのもあり、アルバイトをしながら音楽を続けるという選択をしたという。
 
こうして大学卒業後もバンド活動を続けていった4人だが、最初はすべてが手探りであったと振り返る。事務所もなく本格的に活動を始めるのも遅かったことから、様々な面で情報が少なかったという。「はじめの頃は、曲作りだけでも相当な時間がかかっていました(笑)。バンドをどう運営するかも含めて、自分たちでやりたいようにやるのはとても大変でしたけど、今思えば楽しかったですね」
 
彼らの音楽には新しさと懐かしさが共存している。リスナーの心の中にゆっくりと染み渡っていき、やがて幸せを感じさせる、そんなポップスである。もっとも彼らは特定のものを意識して楽曲を作っているわけではないという。
 
「楽曲作りを重ねるうちに作っていれば形になるようになりましたね。ただ、自分たちが新しく感じるような曲やアレンジなどは、それぞれが常に探していると思います」。そして、これからもずっと楽曲を作って世に出して行くことこそが、ミツメの目標だと4人は話す。
 
最後に音楽を作るクリエイターとして、4人が塾生へのメッセージを語ってくれた。「大学で、長く一緒に活動できるようなメンバーや友人と出会えたのは本当によかったです。色々な人と話して、色々なものを創り出してみる。自分が楽しめそうなことがあったら何でもやってみるといいと思います」 
(松岡秀俊)