かつりか監督 「等身大」が心を動かす

「塾生で、映画監督」。そんな2つの顔を持っていたのが葛里華(かつ りか)さんだ。今年3月に慶大理工学部を卒業した。学業の傍ら、「かつりか監督」という名で、映画製作に打ち込んだ。第28回東京学生映画祭において、5本目となる作品『今日も、今日とて』が実写部門8本のうちの一本に選ばれ、先月29日のコンペティションで上映された。

「今回の映画祭を目指して映画を作ってきたので、本当に嬉しい。目に見える形で結果が出てスタッフや役者にも報告できたので、やりがいを感じた。等身大のものを飾らず表現した点が良かったのではないか」と本選出場の喜びを語る。

本選出場作品である『今日も、今日とて』は登場人物たちが落語や就職活動を通して、誰かに何かを表現するうちに「自分らしさ」を取り戻していく物語だ。

「就職活動で感じたことを忘れないうちに書いておこうと思った」。この映画は大学4年の秋から冬にかけて製作したもので、自身の経験が生かされている。



落語をモチーフにしたのは、大学1年のときに三田祭で落語研究会の寄席を見て、感動したのがきっかけだ。作品中では、有名な演目『目黒のさんま』を土台として、一本の落語を作った。撮影するための劇場の確保や、観客のエキストラを集めるのには苦労したという。

この作品には、総勢40名ほどのスタッフが携わっている。監督をしている中でも「皆と撮影しているときが一番楽しい」と語る。心地よい撮影現場を作れるように心がけ、厳しくする時もあるが、褒めることを決して忘れない。

かつりか監督は、今回の映画が5作品目。これまで「創造工房in front of.」という慶大のサークルで創作活動をしてきた。当初は演劇をしていたが、「映画をネットにあげれば、より多くの人々の心を動かすことができる」と考え、大学1年の冬から映画を作り始めた。

学生時代は、授業後や休日の空いた時間を映画製作にあてていたため休みはほとんど無かったと明かす。脚本の書き方や映像の編集技術は、サークルの先輩から教えてもらった以外にも、独学で身につけた。

脚本を書くときには、いつも自分の経験をもとにしている。想像に頼ってしまうと、メッセージが上手く伝わらないと考えているからだ。「自分の経験や、自分の思いを作品の中に反映させて、見てくれた人に共感したと言ってもらえることが一番嬉しい」と話す。


だが、一筋縄ではいかないのが映画監督だ。「難しいことはごまんとある」。存在しない人物を、観る人がより共感できるように描かなければならない。大切なのは「いかに人間らしさを出すか」。セリフだけでなく、映像全体でキャラクターを表現することも簡単ではない。

「いつかは自分の名前で活動できるようになりたい」。今では社会人となって出版社に勤めているが、さらに大きな映画祭を目指して、これからも映画を作り続けるという。「かつりか監督」はこの先、どのような作品を生み出し、どれだけの人々の心を動かしていくのだろうか。夢の続きが今後も楽しみだ。
(原科有里)