インサイドウォッチ・早慶バスケ~バンキシャが分析する早慶戦

 早慶戦に相応しい大接戦。一進一退の攻防に突破口を開いたのは慶大キャプテンのG加藤(経4)だった。「プレーに関して特に覚えてはいないんですが、先生(佐々木HC)からはどんどんインサイドに入って行けと言われていて。先生の作戦勝ちです」。48—47の僅か1点リードの3Q5分、加藤はルーズボールからつないだパスを受けると、そのまま自らのドライブでシュートへ。早大・加藤はたまらずファールするが、ボールはバスケットの中に吸い込まれる。バスケットカウントワンスロー。大歓声の慶大応援席を前にし、加藤はこのワンスローを外してしまうが、このバスカンでイーブンになっていた試合の流れは大きく慶大に傾くこととなった。早大はこの後5分間ノーゴールが続くことになる。

 もともと塾高時代からディフェンダーとして評価は高かった加藤。しかし、大学レベルは高かった。2年次、志村・石田・辻内のトリオの後を受けて、スタートに名を連ねるが、ポジションは1番、ポイントガード。「リーグ戦開幕までは2番の練習をしていたんですよ。そしたら開幕前日の練習で(小松)誠也がケガして、1番でプレーしたのは当日が初めてでしたから(苦笑)」。チームは苦しい戦いが続き、入れ替え戦も経験した。

 ただ、翌年は司令塔としてレベルアップし、準優勝のインカレでは最終日まで日体大・田中とアシスト王争いを演じた。我慢し、苦労し、とうとう最高学年になって迎えた早慶戦では180㌢というサイズながらリバウンドでも奮闘し、「最後まで集中を持続しての勝利」を果たした。「過去の早慶戦とかインカレも、40分間でどこかで(集中が)きれたりしていて、そういう部分は無くしていかないといけないと思います。ただ今日はそういう部分が無くて自分が成長したな、と。さらにこの部分をつめてやっていきたい」。

 その加藤、さらに副将のG小松(総4)に「今日のMVP」と言わしめたのが、この日先発に大抜擢されたF鈴木(政3)だった。「トーナメントから好調だったけど、トーナメントでは僕に勇気が無くて使えなかった」と佐々木HC。先発起用は前日に決め、当日発表した。その鈴木、開始1分でF香川(環4)が2つ目のファールを犯すと、香川に替わって早大の得点源であるF近森をマッチアップした。

 近森は今、大学バスケ界でも最も好調の選手と言っても過言ではない。トーナメントで早大は、準決勝で関東学院大と対戦した。関東学院大は3部Bであるが、セネガル人留学生・パプが加入し、優勝候補筆頭の青学大などリーグ戦上位の有力校を次々と倒していた。パプのマッチアップ相手は、そのパワーとテクニックに翻弄され、恐れるあまり外からシュートを落とし自らリズムを悪くするという状況が続いていたのである。だが、オフからウェイトに取り組んでいた近森はパプにマークし奮闘。早大は接戦の末に関東学院大を下し、決勝に駒を進めている。決勝では大東文化大に及ばず準優勝となったが、活躍を認められた近森は敢闘賞に選出されていたのである。

 この近森に、鈴木をつけた作戦が大成功する。鈴木の低く構えたディフェンスを相手に近森は攻めあぐね、1Q終盤には2ファウルで一旦ベンチへ下がることとなってしまう。2Qにはファウルこそしないが、今度は得点が決められない。「まずインサイドに入られないことと、外に出たらフリーの場合にチェックに行くことと、ドライブは来たらみんなカバーしてくれるということだったので、あんまり点をとられないように最初は気をつけましたね」と、鈴木は近森への対策を振り返る。結局、近森は前半僅か4得点。後半は鈴木のファイルトラブルもあって最終的に近森は19得点まで持ち直したが、「20点以内に抑えたので合格点」(佐々木HC)。慶大が勝利と同時にベンチから部員全員が歓喜のあまり飛び出したのに対し、近森はずっとベンチでうずくまったまま、立ち上がることが出来なかった。

 春のシーズンは、この早慶戦で終了する。佐々木HCは、「トーナメントと新人戦で結果が出ていなかったから、4年生は相当な気持ちで戦ってくれたので、それが良い結果につながってくれました。秋に向けてチームが成長するきっかけを自分たちで作れたので、良かったと思います」と話す。トーナメント準優勝のチームを相手に一度もリードを許さずに勝利したことは、間違いなく秋へと繋がっていく好材料だ。

 一方で、春シーズンを通じて絶対的に優位に立てなかったリバウンドについては、今後も大きな課題になる。「ミドルレンジのシュートと長いシュートに対してのボックスアウトは技術的に違うものなんですよね。落ちてくるリバウンドは全く質が違うんです。ただ選手はそれが分かっていなくて、プレスが出来ていないんですよ。今日も危ないところがあったけど、リング下でのリバウンドがとれていないです。あれが2、3本続くとゲームの流れが変わってしまうので、そこで踏ん張れたのは良かったです。もうちょっと、身体接触をキチンと秋まで練習しないといけませんね」と佐々木HC。秋のリーグ戦は9月8日、法政大戦で開幕する予定だ。