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進むデジタル学生証の実証実験 学生の生活はどう変わるのか

慶大は昨年10月26日、学生証や卒業証明書などの発行手続きをオンライン化する実証実験を伊藤忠テクノなどと行うと発表した。発表によると実験では、デジタル学生証などを運用するための分散化されたID基盤を構築し、一部の利用シーンへ試験的に適用する。

新たに作るID基盤を利用することで、学生の名前や学部といった各種属性に加え、学生証や卒業証明書などの証明データをオンラインで検証できるようになるという。ID基盤には分散型モデルに対応するデジタルIDとデジタル証明技術を使うことで、オンラインで本人確認や資格証明が可能になるとしている。

他大学や企業のシステムと連携すれば、単位の互換や書類提出の手間を省けるほか、将来的には決済システムなどと連携して学生割引を適用できるようにするなど、利便性の向上を目指す。2021年2月までデータ基盤の開発を進め、3月から一部の学生を対象に実証実験を始める。

実証実験を開始したデジタル学生証について、慶應義塾ITC本部の細川達己氏と伊藤忠テクノソリューションズ株式会社西日本ビジネス開発チーム・チーム長の富士榮尚寛氏に話を聞いた。

 

デジタル学生証導入によるメリット・デメリット

まずデジタル学生証の導入実証実験の目的として、学生証や卒業証明書などの発行手続きの円滑化が掲げられている。この背景にあるのは、現在、新型コロナウイルス感染拡大によりオンラインで各種証明書を発行し、それらを確実に検証できる仕組みが必要とされているということである。

対面での各種証明書の発行について、偽造や来訪の手間を考えると頻度は低いとはいえ、提示された本人確認書類が本人ものかどうかを確実に検証する方法がなく、セキュリティーが担保できないという問題点がある。一方、デジタル学生証はこの短所を克服し、オンラインにおいては各種証明書の発行の際に万全な本人確認が可能であるため、セキュリティーが担保できる点を富士榮氏は強調する。

とはいえ同時に、スマートフォンなどの端末の乗り換えによるデジタル学生証のデータの保管法や移行法が確立されていない点は、今後改善の余地があるという。

またデジタル学生証の導入により、起こり得るトラブルもある。経歴詐称や学割の不正利用など、従来のアナログの学生証でも起こり得る「なりすまし」はさることながら、改ざんやスクリーンショットなどのコピーによる悪用も挙げられる。

このような悪用に対する具体策として、細川氏は、改ざんしにくい仕組みの確立のほか、分散台帳など盤石となるシステム基盤の構築と学生認証システムとの紐付けが有効だと述べる。

「偽造は紙よりデジタルのものの方がしやすいのは事実。Keio.jpを用いた学生認証システムを、今後はさらに強固なものにしていきたい」

デジタルアイデンティティ基盤の利用イメージ

今後の展開

大きく学生の環境が変わると予想されるデジタル学生証。細川氏は、「デジタル学生証を導入する上で、そもそもそれが利用されなければ意味がないため、まずは広く認知される必要がある。同時に、大学側がデジタル学生証を発行するためのモチベーションの維持も重要となってくるだろう」との見方を示す。

デジタル学生証は今後、段階的に実験を展開していく。まずは慶大内での窓口業務や、アプリへのwalletログインでの利用開始を、21年4月をめどに目指していく。その後は、他大学との単位互換を見据えたデータ形式の共通化などを図っていくほか、大学という枠を超えて企業連携も進め、インターンをはじめとした採用業務の円滑化を目指す。さらに、学生定期券の購入も将来的にはデジタル学生証で可能にしていきたいという。

とはいえ、これらは大まかな構想に過ぎないと富士榮氏は述べる。

「まだ細かいシナリオは構築段階だというのが現状。今後は企画を通じて実際に学生の皆さんに使っていただきながら、利便性向上を目指していきたい」

 

時代の変化とともに変わりゆく私たちの身近なものたち。その一つとして、今、学生証が期待と注目を集めているのである。今後の展望から目が離せない。

 

(鳩山広起)

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