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シャッターを上げて 境界線のない社会へ

見る都度捉え方が変わる映画に出会ったことがある人は、どれ程いるだろうか。高橋和勧監督の手がけた『未来シャッター』は、見る人や見る時の心のあり方によって、ストーリーの捉え方が異なっていくと称されている映画だ。東京都大田区を主な舞台として、社会になかなか適合することのできない「マージナルマン」である青年たちを主軸に、ストーリーは展開していく。

映画製作のきっかけは、2010年にエアポート快特が京急蒲田駅を通過する計画が浮上したことに遡る。この計画に反対する地元住民の運動に注目した高橋氏は、映画を手段としてこの地域問題と折り合いをつけた作品「商店街な人」を製作した。この前回作でこの地に惚れ込んだ高橋氏は、今回も東京、蒲田を舞台に選び、キネマのまちの再生と人々の幸せを図って『未来シャッター』のメガホンをとったのである。

『未来シャッター』は最終的な目標を映画による地域活性化としながらも、「境界線」をテーマとして製作されている。その一例として、主人公たちは様々な社会の境界線上にいるマージナルマンだ。マージナルマンを取り上げた理由として高橋氏は「マージナルマンに限らず、排他的な社会的概念も変えていきたい。多様な定義があるマージナルマンも、境界線上にいるからこそ良い意味で一歩踏み出し、創造を生み出し得る人だと思った」と語る。彼らが一歩踏み出して社会を変えていくことで、地域活性化を始めとする社会問題の改善にも繋がるのではないかと言う。

映画製作の過程にもこのコンセプトが生きている。不特定多数の出演者の中には、「境界線を越えて新たなものが生み出される」という監督の理念に賛同して自然と集まった人も多い。時宗総本山の法主も含め、様々なバックグラウンドの出演者が名を連ねている。ほかにも競合企業がどちらも協賛しているなど、理念に共感した人や企業が集まって製作された、境界にとらわれない映画であることが窺える。

境界を感じさせないこの作品を見終わった時、多くの人が口にするのは、「対話型映画」という言葉であるという。文化や宗教の垣根を越えて作られた『未来シャッター』は、鑑賞者の無意識に「自分は何者なのか」と語りかける作品になっている。高橋氏は「政治にも無関心な人が多い日本人の無意識に火をつけたい」と熱い思いを語った。

また、映画からのこうした問いかけに対して自ら考えることから生まれる再創造も、この映画の特徴の一つだ。『未来シャッター』上映後に行われるフューチャーセッションでは、対話と再創造を主題に、鑑賞者同士の議論が展開される。映画を見た後の再創造も含めた一連の流れが、映画『未来シャッター』なのだ。

子供から大人になる途中、ある意味で我々大学生は境界線上にいる。そんな私たちこそが、対話を通して新たな社会を再創造していく可能性を秘めているのかもしれない。
(井上晴賀)

【報道】市民発の映画『未来シャッター』をSDMで公開

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