文学部は17専攻もあって広いですから、どんな人の好奇心にも応えられるような学部ではないかと思っています。

私の所属する英米文学専攻というと、知らない人が聞けば英米文学の作家研究を主にやっている専攻かと思うかもしれません。しかし実際にはそれだけではなくて、英語史といって英語の歴史を研究する人もいるし、言語学の人もいます。私が専門としている社会言語学は簡単に言うと、言語と社会の関係について研究するものです。文学部の学問はあらゆることに関係している分野なので、やれることはたくさんあります。

例えば心理学だと、実験心理学はほとんど理系と同じです。それから、法言語学であれば法律の解釈などに関わっていたり、社会言語学では経済上の動きと言語の変化の関連性について研究したりもします。倫理学は医療上の倫理問題にも関わっているし、哲学でも特に慶應では科学哲学などもあるため、一口に文学部と言ってもその学問領域は多岐に渡るのです。

慶應文学部の良い所は、2年目に学生は専攻を選ぶので1年間は迷う時間を与えてくれることですね。その間は、文学部の各専攻が開いている「特論」の講義など、興味のある様々な分野の「つまみ食い」をするのが良いでしょう。

また、慶應文学部は語学を非常に重視しています。一般的に会話能力が重視されるところを、ここではきちんと「読んで」、きちんと「書ける」力を身につけることが重要になると思います。それが結果的には「話す」力をつけることにつながるのではないでしょうか。  

言語学者としては、例えば英語を学ぶときには今までのように、ただ単に単語や文法を覚えるだけではなく、そこにはしっかり理屈があるはずなので、そこを問いながら学んでいってほしいと思います。

そういう好奇心をもって、共に学ぶ同級生とも積極的なコミュニケーションをとりながら、充実した大学生活を送っていくと良いでしょう。

 

(聞き手=村上龍汰)