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【塾員インタビュー】バレエダンサー・檜山和久さん

提供:檜山和久さん

「内股を直そうと、7歳のときにモダンダンスを習い出したのがきっかけでした」

プロのバレエダンサーとして活躍する檜山和久さんは、15歳のときクラシックバレエに挑戦したいと自ら志望し上京した。慶應義塾高校に入学後、クラシックバレエを始めた。慶大文学部に進学すると、すぐに学校とバレエスタジオを往復する生活が始まった。

大学3年次に、谷桃子バレエ団創立60周年記念公演に出演する機会が訪れる。その際、共演したプロのバレエダンサーたちの真剣な姿から刺激を受けた。そして自身も彼らの後を追う意志を固めた。  

大学の授業とバレエのレッスンを両立させながら2010年に大学を卒業。翌年、谷桃子バレエ団に入団し、プロのバレエダンサーになった。

夕方までバレエ団でのレッスン、その後出演する公演や発表会のリハーサルに向かう。同時に複数の作品の振り付けを覚え、体力を維持するのは容易なことではない。しかし、本番はおおよそ毎週ある。「ダンサーはどうしても怪我を避けられない」と話す。本番直前に肉離れやぎっくり腰になり、痛みを堪えながらどうにか乗り切った舞台もあった。

長身を活かしたダイナミックな踊りはバレエの本場・ロシアの振付家からも評価され、一昨年の公演『海賊』では主役に選ばれた。スポットライトを浴びる時間が伸びるのと比例して厳しさの増す練習の途中で、意識を失ったこともあった。

プロとして活躍する檜山さんが、技術面以外で苦労することがあるという。そのひとつが「チケット負担」だ。出演者それぞれが役に応じて一定数、公演のチケットを割り振られ、各自で買ってもらう観客を探すというシステムである。これは国内のバレエ団で多く取られている方法だが、日本のバレエ界の現状を象徴する慣習といえる。「どうやったら観に来てくれるだろう、と頭を働かせたことは何度もあります」と話す。



日本においてバレエは一般的に「女の子のお稽古事」として広く認知されている。けれども、バレエは本来、老若男女が鑑賞できるエンターテイメントである。そうした総合芸術として、普及していない現状がある。日本のバレエが発展途上である一方で、欧米ではバレエダンサーという地位が社会的に確立している。ダンサーのための福利厚生なども整備され、公演チケットの需要も大きい。「バレエダンサーが技術を磨くだけでは、日本でバレエの真価は広まらない。ダンサーの支援に加え、誰もがバレエを観ようと気軽に劇場へ足を運べる環境づくりが必要です」

プロとして舞台で踊れるのはおよそ40歳まで、と言われている。その貴重なダンサー寿命を全うすべく檜山さんは練習を重ね、より高みを目指す。将来は若い世代への指導も志しているそうだ。「踊ることは本当に楽しい。好きなことを仕事にできるのは幸せだと思う」と笑顔を見せた。

国内でもダンサーと観客のためのサポート体制が整えば、日本のバレエはより魅力を放つことだろう。期待が膨らむ一方で、環境改善への道のりはまだ長い。
(三谷美央)