ラグビー人生の集大成 伝統の系譜を継ぐ男 三木貴史

敵の強烈なタックルをものともしない三木
敵の強烈なタックルをものともしない三木

昨季の雪辱を期す



慶大蹴球部の長い歴史は、多くの個性的なウインガーによって彩られてきた。近年では栗原徹(01卒)、山田章仁(08卒)ら日本を代表する選手を輩出している。そして今、この系譜を継ぐのが三木貴史(経4)だ。
 169㌢の小さな体で左サイドを駆け抜け、大男たちのタックルをひらりと交わし、トライを奪う。林雅人監督が「忍者」と形容するプレースタイルは中学時代から変わらない。
 「ラグビー部顧問の担任に勧められた」ことが運命のスポーツとの出会い。「ボールを持ったら走っとけ」と言われ、ひたすら走り続けた。高校、大学へと続く三木の原点だ。
 三木はウイングとして足が速い方ではない。しかし、自らの長所に挙げる「タックルされても倒れない」強靭なボディバランスと「高校時代から得意だった」強力なハンドオフ(タックルに来る相手選手を手で突き放すプレー)を駆使し、敵陣を突破する。
 昨季、関東大学対抗戦(7試合)で7トライ、大学選手権(3試合)では3トライを奪った。しかも早大戦での2トライなど大一番で力を発揮。自身でも「出来すぎ」と振り返る活躍だった。
 その要因を「味方が内側に敵を寄らせて、外に自分のスペースを作ってくれた。チームが活躍させてくれただけ」と謙虚に分析する。
 今季は4年間の集大成となる。「去年以上の活躍をしたい」と語る一方で「攻撃で活躍できない時も、タックルを頑張るなど、チームの力になれるようにしたい。勝たなければ意味がない」とチームの勝利にこだわる。
 昨季は早大戦(20―20)、帝京大戦(17―19)と三木の活躍でリードを奪いながらも、終了間際に攻め込まれ、勝利を逃した。
 その教訓から「自陣に釘付けにされたときにどう流れを変えるか」をテーマにチームは練習に取り組んできた。また「考えながらラグビーをすることを心がけ、試合中に混乱しないよう練習から意識してきた」という。三木は「昨季のようにはならない」と自信を見せる。
 日本一を目指すうえで大きな壁となるのは、昨季、敗戦を喫した帝京大と東海大だ。両チームとも大型FWを擁する。三木は「体格の差、力の差は感じる。しかしそれ以外で勝つこともできる」と正確で速いパスを回す慶大らしいラグビーで雪辱を期す。
 卒業後は一般企業に就職し、第一線のラグビーから離れるという。「よく考えてこの道を決めた。その分、今季、結果を出さなければいけない」と意気込む。
 大学4年間、そして10年間のラグビー人生、全てをかけたラストシーズンが開幕する。
(岩佐友)