この映画が問いかけるものにあなたは答えることができるだろうか。この映画の抱える闇を現実へと照らし合わせられるだろうか。
 妻を亡くし、一人娘の成長が生きがいだった長峰重樹(寺尾聰)。しかし、残虐な事件によって娘を突然失う。失意の底にいた彼に、ある日密告電話が入り、犯人とその場所を知る。その場所で娘の酷い殺され方を知った彼は、少年法に守られ法で裁くことの出来ない犯人の少年たちを自らの手で裁くことを決意する。1人目の少年を殺害した彼はもう1人を追う。一方で警察も少年と長峰を追うのだが……。
 今作品の原作者は『容疑者Xの献身』、『秘密』など多数のヒット作を手がけた東野圭吾。彼の作品の中でも今作は内容の重さ、暗さのゆえに映像化は難しいと言われてきた。その重さの中核としてあるテーマは、少年法という社会的な問題だ。非常に深く、難しい問題のために作品の空気は娯楽性をまとう事を許さない。この映画は考える映画であり、単純に楽しむものではないと言えるだろう。
 難しい役どころである長峰を演じた寺尾聰の演技は圧巻だった。決して大げさなものではない、表情をほとんど変えない静かな演技。だがそこにはとてつもない存在感がある。長峰がその表情の奥に潜ませている感情を考慮しながら観賞するのも作品の見所のひとつだ。
 ただ、ストーリーの面で言うと残念な点もあった。移動する場所があまりにも物語的過ぎる点だ。少年を追う長峰がペンションに泊まり猟銃を手に入れるところなども、いわゆるお約束的で展開が読めてしまう。全編に渡って読めてしまう部分が多かったのは残念だった。
 しかし、今作品はそういった物語を超越して問いかけるものがある。正義とはどこにあるのかもそのひとつだ。少年法で保護される犯人を考えると警察は被害者ではなく、法律を守っているのではないか、といった具合に。現実にも存在する簡単には解決しない問題。それを長峰、警察、第三者と様々な視点で見て、考えることがこの作品の真髄ではないか。
 ラストシーン、長峰の台詞にはきっと何かを感じるはずである。
(太田翔)