10月15日、吉高由里子さん主演の連続ドラマ「最愛」(TBS系/毎週金曜よる10時)の第1話が放送された。殺人事件の重要参考人となった女性実業家・梨央(吉高)と、梨央の初恋の相手で事件の真相を追う刑事・大輝(松下洸平)、彼女を支える弁護士・加瀬(井浦新)の3人を中心に展開していくオリジナルのサスペンスラブストーリーだ。本作のプロデューサーを務める新井順子さんに、制作秘話やプロデューサーの仕事について聞いた。(取材:塚原千智)

ドラマ「最愛」が視聴者に届くまで

―ドラマ「わたし、定時で帰ります。」(TBS系/2019)で、吉高由里子さん演じる結衣が救急車を呼ぶシーンがきっかけで、ドラマ「最愛」が誕生したそうですが、どのようにドラマの構想をつくり上げたのでしょうか

ラブストーリーが強めのサスペンスにしようと思い、「初恋の人と再会したときに、刑事と容疑者だったら?」と考えました。青春時代にはお互いを思い合っていた二人が、その時は結ばれず、刑事と容疑者として再会したときに、どう関係性が変わっていくだろう?というのをベースにスタートしました。

―ラブストーリーを強めにしたいと思ったのはなぜですか

サスペンスにおいて、事件や事故が起こる理由の多くは「大切な人を守るため」など、愛があるのではないかと思います。今まで手掛けてきた湊かなえ原作のドラマ(「夜行観覧車」(2013)、「Nのために」(2014)、「リバース」(2017))では、ラブストーリーを大々的にやらず、家族愛や友情をテーマにしてきました。3本やってきて、ラブストーリーをもっと入れた方がいいのではないかと思いました。

第1話では、梨央(吉高由里子)と大輝(松下洸平)が、岐阜県の白川郷で過ごした青春時代と二人の恋心が描かれた(C)TBS

―「最愛」の第1話が放送された時に、「Nのために」がTwitterでトレンド入りしていました。こういった視聴者の反応はどう捉えていらっしゃいますか

高校時代に同じ時を過ごしていた二人が、事件をきっかけに再会する構成が似ているのかなとは思うのですが、ストーリーは全然違います。「Nのために」のファンが懐かしさを感じて、「最愛」を見てくれるきっかけになれば嬉しいです。

殺人事件の重要参考人として、15年後に大輝と再会した梨央(C)TBS

―今回、サスペンスバージョンとラブストーリーバージョンの2種類のポスタービジュアルを作ったのには、どんなこだわりや思いがありましたか

サスペンスバージョン(左)とラブストーリーバージョン(右)の2種類のポスタービジュアル(C)TBS

サスペンス作品なので、登場人物みんなが怪しい雰囲気のポスタービジュアルを作ろうと決めていました。でも、それだけだとラブストーリーでもあることが伝わらない。白川郷で穏やかな青春を謳歌した時代を描いた第1話のように、優しい雰囲気のものも作らないと、ただただ怖い番組だと視聴者に思われてしまうと思い、2種類作りました。

こだわりのつまったドラマ「最愛」

―オリジナル作品だからこそ、大切にしていることはありますか

登場人物の名前です。原作は名前が決まっていますが、オリジナルの場合は名前を考えるところからスタートします。姓名判断で総画が良い名前を考えるんです。「最愛」の主人公である「りお」の漢字にもいろいろなパターンがあるのですが、夜な夜な姓名判断し続けてこだわりました。

オリジナルの場合、みんなイメージするものが違うので、自分の想像だけを押しつけないようにしています。現場に足を運んで、キャストや監督とコミュニケーションを取って、イメージの共有をしています。また、物語の結末や犯人を、必要な人にしか教えないようにしています。役柄上、物語の結末を知らなくていい人から「俺だけ(犯人を)教えられてない」とよく言われますね(笑)

―第1話では、駅伝のタスキをつないだ大輝を、歩道橋で見届ける梨央のシーンが印象的でした

ドラマ「最愛」第1話より、駅伝のタスキをつないだ大輝を歩道橋から見届ける梨央(C)TBS

台本を作っている時点で、「離れた場所から梨央が大輝にさよならを言う」というイメージを監督に伝えていました。ロケ地の決定は監督がするので、いろいろな場所の候補の中から、梨央がいる歩道橋の下を大輝が走っていくということにしたんだと思います。

このシーンを撮影した場所にはかなりこだわりました。緊急事態宣言が出た影響で、8・9月に撮影に行けなくなってしまったのですが、どうしてもそこで撮りたいということで宣言が明けるのを待って、放送ギリギリに撮影に行きました。

放送ギリギリまで粘ったロケ地での撮影が、魅力的なシーンの誕生につながった(C)TBS

―駅伝のシーンで、宇多田ヒカルさんが歌う主題歌「君に夢中」が初披露されました。宇多田さんに主題歌をオファーした理由をお聞かせください。

声質がサスペンスとラブストーリーに合う印象があり、いつか一緒にお仕事したいと思っていました。過去にオファーしたこともあったのですが、タイミングが合わなかったり、活動休止と重なってしまったりしていたんです。今回は、内容も含めてご快諾いただけたので、念願が叶いましたね。私自身がデビュー当時からのファンでもあるので嬉しかったです。

―毎週金曜日よる10時を楽しみにしている「最愛」の視聴者にメッセージをお願いします。

「最愛」というタイトルの由来は「誰もが“最愛のもの”のために動いている」ことです。自分だったらどんな選択をするのか?を考えながら、主人公の選択にも注目してほしいです。なぜその人はそんな行動をするのか?何がその人の“最愛”なのかを考えながら見てもらえたらと思っています。

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