《こんなはずじゃなかった、夏の終わりのとある出来事》

 

日吉駅のシンボル、銀玉。私はそこで待っていた。

「こんにちは!」

ふと後ろを振り返ると、子犬のような少年が、つぶらな瞳をきらきらさせながらこちらをまっすぐ見ている。

松尾樹隆くん。商学部の1年生。子犬のようだけど、強くて、自由で、わが道を突き進むタイプなんだろうな。そう、彼はわが道を突き進む。夢は公認会計士。その夢に向かって努力を重ねる。

しかし、彼が大切にしているもの、それは「個」よりも「和」。テニスをやっていたが、高校、大学と演劇に熱中。6月の新人公演で、役者に挑戦し、仲間とともに舞台からの景色を眺め、胸が熱くなった。「でも、演劇はもともと自己満足なところもあるなって思っていて。高校のときはお金をとらずに自主公演をやっていたけど、大学になってお金をいただくようになって、お客さんのこともちゃんと考えなきゃなって。誰かのために、なにかできる人になれたらいいな」

あこがれの芸能人は、窪田正孝。「筋トレをすごいしてるみたいで。ストイックに生きれる人はいいなあって。人の前に形に出したときに、この人ストイックなんだなってわかるくらい努力を重ねられる人」




好きな女性のタイプ。こういう話をするのが義務なんだと伝える。はにかむ彼。「歌手のYUI。感情をわあって放出する人より、うちにためちゃうような人いるじゃないですか。そういう人のほうがひかれる。笑うときは笑うけど、何を考えているのか分からない人かな」

さらに掘り下げたくなる。「好み、まだ追求しますか?」と照れ笑う彼。「一番理想のタイプは、おばあちゃんなんですよ、おばあちゃんめっちゃ好きなんですよ」。ペンを動かす手が速まる。「言動も笑顔もかわいい。根底にちゃんと頼れる人だという信頼感があって、そのうえで、かわいさとか、よしよししてあげたいなあって……」

そして、真剣な、まっすぐな眼差し。「将来の夢は、幸せな家庭を作ること。そのために夢を叶えたいから、勉強も頑張ってる」

写真撮影にはいり、はじのほうで見ている私。夕日のあたる屋上と、完璧にポージングをこなす彼。カメラに向けられた彼の視線。時折私の方に向けられる。いや、視線はカメラのはずなのだけど。どっちだ? わからない……!

(甘酒フリーク)

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