オーストラリアンフットボール。われわれ日本人には耳馴染みのないこのスポーツ、実はオーストラリアの国技である。
 田中慎一(政4)も現在は『レパーズ』という慶大・早大・立大などの学生混成チームで日々チームメイト達と汗を流しているが、大学に入学するまではオーストラリアンフットボールの存在すら知らなかった。
「初めはラグビーサークルか何かに入ろうかと考えていたんですが、大学の入学式で勧誘されて。練習に参加してからは、どんどんはまっていきましたね」
 母国オーストラリアではラグビーと人気を二分しているものの、日本では競技人口が百人程度のマイナースポーツ。彼は、なぜあえてこのスポーツを選んだのか。
「やはり人と違うことがしたいというのがありました。(他のメジャースポーツとは違い)オーストラリアンフットボールは学生主体で作り上げていかなければならないというところに魅力を感じたんです」
 オーストラリアンフットボールという競技自体の魅力は「なんといっても、『自由度』が高いこと。オージー気質というか、すごくアバウトなスポーツ(笑)」であることだそうだ。
「楕円球のボールは蹴ってもよし、手でパスしてもよし。手でパスするときはパンチングです。ポジションなどの役割的にはサッカーに近く、タックルの激しさや手も足も使えるという点ではラグビーに近いですが、18人制であることやパス・タックルの自由度といった面は、サッカーやラグビーとは違うところですね」
 田中は、今年8月メルボルンで行われるインターナショナルカップに日本代表SAMURAISとして出場する。日本は、今年5月にオーストラリアで開催された『環太平洋のオリンピック』と呼ばれるarafura gamesにおいて、見事銀メダルを獲得。着実に力をつけてきている。そんな中行われる、オーストラリアンフットボールの国際大会。全16カ国が参加するこの大会で、日本が入ったpoolA(予選A組)には、アイルランドやナウル共和国といった強豪国がひしめく。
「欧米やカリブ海諸島の選手達は、身体能力の面でずば抜けているなと感じますね。日本はスピードやチームプレーで勝負していかなければならないと思います」
 現在、田中は8月のインターナショナルカップに向け、日々ハードなトレーニングをこなしている。そんな彼に、これからの目標を伺った。
「近いところではインターナショナルカップ優勝。長い目で見れば、慶大にオーストラリアンフットボールのチームをつくること。最終的には、日本で皆がオーストラリアンフットボールを知っている状態にしたい。そのためにも、動けるうちは続けていきたいですね」
 練習場もままならない、専属のトレーナーもいない上に、遠征費も自己負担という環境下であっても「そこらへんの学生では経験できないことを経験しているからね。自慢できますよ」と語る彼の目は輝いていた。

(安藤貴文)