慶大先端生命科学研究所バイオラボ棟(提供:TTCK事務室)
小さな都市から世界に発信
山形県西部の都市、鶴岡市に位置する慶大鶴岡タウンキャンパス。先端生命科学研究所と連携して2001年春に誕生した。日吉、三田の学生にとっては聞き慣れないが、SFCの学生を中心に先端生命科学分野の研究が行われている。

所長の冨田勝氏は「自然豊かでリラックスできる、研究がよりいっそう進む環境」だと語る。

主に授業はSFCの学生に向けて設置されている。しかし、いわゆる従来型の「知識を教え込む授業」ではない。例えば「バイオキャンプ」と称される実験中心のプログラム。主体性を重んじ、学生が自身のモチベーションを自発的に高められるような授業だという。自ら研究力を育成できる学生。それこそが鶴岡タウンキャンパスが目指す学生像だ。

同卒業生の関山和秀氏らは「クモの糸」の人工合成に成功した。NASAにも米国国防総省にもできなかったことを実現させた。このほか、独創的で知的産業に貢献できる研究成果を多くの卒業生が残している。

さらに、大学発のベンチャー企業も2つほど起業されている。現在、そのうちの1社は、近々の上場を目指して準備中だ。

鶴岡にキャンパスを設置したメリットは何なのか。一つは地元自治体である山形県、鶴岡市からの積極的な支援があげられる。毎年、学会などの催事運営でさまざまな協力を受けており、地元からの期待が伺える。

第2のメリットとして鶴岡市は「十分に大きく、十分に小さい」都市という。同市は地方都市市政の成功例として日本全体に影響を与えうる大きな都市といえる。一方で市全体が大学機関などに対して柔軟性が高い規模であるということも指している。世界的な科学研究の拠点をめざす同キャンパスにとって最適な環境だ。

同キャンパスは、研究のみにとどまらす、慶大付属高校や地元高校の生徒を対象としたプログラムも充実させている。短期プログラムではあるが、場合によっては期間外でも有志の生徒を対象に、個別のフォローアップをすることもあるそうだ。また、生徒が持ってきた研究材料を面白いと思った研究員が協力して研究を進めていくという。

「決して普通の大学生になってはならない」と語る冨田所長。自然に囲まれた同キャンパスでは世界的研究をしたいという志を持つ学生が集まっている。(八島卓也)