〇憧れと合理性が交差した慶大志望の原点
「将来やりたいことが、ずっと明確にあったわけじゃないんです」。そう話すのは、「ミス慶應コンテスト 2025」でグランプリを獲得した北川智子さん(法法・4年)だ。中学生の時に訪れた三田祭が、慶大を志すきっかけの一つになったという。「純粋にキラキラして見えました」と、その記憶を振り返る。ただ、志望理由は憧れだけではない。「夢が常にあるタイプじゃなかったからこそ、将来の自分のために選択肢を残しておける状態にしておきたい。いつか本当にやりたいことが見つかったときに、動ける自分でいたかった」。憧れと合理性、その二つが彼女を慶大へと動かした。受験勉強への向き合い方は徹底していた。「決断したのが早くて、『絶対に受かる』『慶應じゃなきゃ自分じゃない』という気持ちで勉強に向き合っていました」。当時の勉強中心の生活は、「修行かなって思うくらい」煩悩を捨てたものだったという。実際の受験方法は彼女の note 記事に掲載されている。
「新しい iPhone が出たら、数日前から並んでいる人がいるじゃないですか。あれくらい。前からやってるんだから受からなきゃ逆におかしいと思える状態に持っていくまで徹底していた。」と例える。量だけではなく、方向性にも確信があった。「受かるべくして受かったと思えるくらい、正しい方向性で勉強量をこなせばいい」。そう言い切る一方で、心境は決して余裕だけではなかった。入試の帰り道、受験生が友人同士で答え合わせをする声が耳に入った。「『それ選んだのかよ』みたいな会話が聞こえてきて、『私、その答え選んでいる……』ってことがあって(笑)」。周囲に知り合いがいなかったため、試験会場でも「もちろんボッチ」。判定もずっと悪く、「正直、受かると思っていなかった」と当時を振り返る。強い言葉で自分を奮い立たせながらも、同時に不安を抱えていた。
〇馴染めるかよりも飛び込むことの選択
そんな彼女が慶應に入学して感じたのは、「皆さんが大人っぽく、輝いて見えました」という印象で、想像以上に「イメージ通り」だったという感覚だった。入学式の日、誰にも話しかけられないまま式場を後にした。先輩を含め、同じ高校から慶應に進学した知人はいなかったため、最初は友人関係を築く入り口が見いだせなかったという北川さんは、「知り合いがゼロ人、周りはもう友達がいるように見えて、焦りはありました」と当時の心境を語る。また、「修行」のような受験生時代を送っていた北川さんにとって、入学式は慶應のステレオタイプを初めて実感した場でもあった。「入学式に行ったら、髪色や持ち物にはびっくりしました(笑)。全員がそうじゃないですけど」。ただ、そこで立ち止まらなか
ったのが彼女らしい。元々社交的な性格ではあったが、一方で周囲の環境に気後れすることもあった。だからこそ、彼女は意識的に「飛び込んでみる」ことを選んだ。「馴染めるかどうかは置いておいて、いろんなところに飛び込んでみる」。アルバイトやサークルなど、頑張らなければついていけないと感じる場所にあえて挑戦した。結果、「得られたものや、成長できたものは大きかった」と語る。その選択は、彼女を大きく変えた。尊敬できる人が多くいる環境に身を置いたことで、「切磋琢磨し合い、リスペクトし合えるよう頑張りたいと思える仲間」に出会えたと、卒業を控えた今、振り返る。
〇見られることで得られた自己成長
大学 4 年次、彼女は「ミス慶應コンテスト 2025」への挑戦を決意する。背景には、「受験期のモチベーションとして、ミスコンに出ている方々の SNS を見ていた」という記憶があった。そして、もう一つの理由は彼女の性格によるものだった。「何事もやるからには一番。目標は達成しないと。中途半端が苦手なんです」。そう語る彼女にとって、準備が整ったと感じたタイミングが、就職活動を終えた 4 年生だった。さらに、出場に込めた思いを「自分の考え方が突飛だったり、経験もちょっと変わっていたりする。そういうところで『こういう人もいるんだな』『こういう考えもあるんだな』って、誰かに届けばいい」と語る。自己実現にとどまらず、発信が誰かの背中を押すかもしれない――その期待が彼女の背中を押した。ファイナリストとして過ごした半年間は、「たくさんの人に見られて、評価される環境って、弱い部分やコンプレックス、苦手な部分と直面しなければいけない場面が多かった」と語るように、自分自身と向き合う時間だった。これまで取り繕うことは得意だったが、隠すことの限界を突き付けられた。その結果、「外見の自己評価は一限的なものでしかなくて、十人十色、人の数だけ価値観や基準が違う。全部を追うのは無理だから逆に見た目をあまり気にしなくなりましたね(笑)」。もう一つの変化は、「人に頼ること」だった。「人に頼るのが苦手だった」と話す彼女だが、自力では到底達成できないものに直面した。ミスコンでは努力する姿を見せ、周囲が行動を起こしてくれることで初めて前に進める側面がある。そこで彼女は、誰かに手を差し伸べられる温かさを知った。その実感が、「自分一人ではできないことにも挑戦しようと思えるようになった」理由だ。

グランプリ獲得の瞬間は、信じられなかったという。「後悔のないようにやり切ろうとは思っていたものの、確証はなかった」。時間が経った今、彼女の胸の内にあるのは感謝と決意だ。彼女は、受賞をゴールではなく、出会った人々の期待に応えるスタートとして捉えている。「『新しいものが見たい』『今後の人生を見てみたい』と思ってくださる方が多い。グランプリ受賞を生かせるように頑張っていきたい」。その姿勢こそが、彼女の核心なのだ。
〇結果がすべてじゃない-受験生の言葉
受験生に伝えたいことは、意外にも「結果の揺らぎを認めること」だった。「『目標は達成しなきゃ自分じゃない』みたいに厳しい言葉を並べてきたけれど、逃げ道が全くなかったわけじゃないと思う」。続けて、「それ一つがだめだからといって、自分がだめなんだってなるんじゃなくて、それを飛び越えた先の目標に切り替えてリベンジを図ったり、もう一回チャレンジしたり。最終的に結果オーライになればいい」と語る。そもそも目標は「自分が幸せになるため」に立てるものだ。頑張った自分を肯定できるなら、どんな結果でも「100 点」だと言い切る。最後に彼女が考える慶應義塾の良さを尋ねると、答えは「自分を信じられるようになった」だった。「自分に自信を持っていて、自己を信じて挑戦する人がたくさんいる。入るまで私にとって慶應は雲の上だったけど、入ったことで『もっとこうしてみたい』『やりたい』を実際にやっている人がいるのを見て、一歩前進できた」。どんな構想であっても、それを実現しようとする仲間が見つかる。そうした環境が、彼女の挑戦を支えてきたのだ。また、「叶いさえすれば、早いも遅いも意外とない」と、大学を高校までの画一的な価値観から離れ、さまざまな自分が認められる場所だと形容する。だからこそ、「まずは頑張った自分を労ってほしい。そして、おいしいものをたくさん食べてほしい(笑)」と締めくくった。
1 月の大学入学共通テストを皮切りに、2 月には大学入試が続々と始まる。受験勉強の終わりを間近に控えた今、不安や迷いを抱えている人も多いだろう。しかしそれらは、やがて時間の流れの中で「思い出」となり、確かな「経験」として自身の糧になっていく。慶大志望の受験生諸君にも、そうでない受験生諸君にも、それぞれの場所で桜が咲くことを心から祈っている。
彼女の受験やミスコン活動、その他考えは北川智子の note でも詳細に発信されている。以下の URL からアクセスできるので、受験生、とりわけ慶大志望の受験生はぜひ参考にされたい。
https://note.com/satoko__kitagawa/n/n09cc6e7a4983?sub_rt=share_b

(金田悠汰)