今月3日、三田キャンパス北館ホールで「聴いて観て考える!日本経済この1年」と題し、講演会と朗読劇が行われた。開会に際し丸山徹経済学部教授は「今年を振り返り、新しい1年を考えるヒントになれば」と開催の趣旨を語った。主催は第1部が慶大経済学部、現代の政治・経済を考える「樫の会」、第2部は慶應義塾、三田文学会。

第1部では同志社大学の林敏彦教授が「災害ユートピアが終わるとき」をテーマに講演。阪神淡路大震災の被災経験をもとに、東日本大震災後への政府の対応が被災前の状況に戻すという原型復旧のみになり、復興自体は進んでいないことを指摘。

災害ユートピアとは災害時に出現する非日常特有の理想郷で、義援金、ボランティア、災害弱者への思いやり、英雄の誕生、連帯などの特徴がある。その一方で、避難した被災者の帰郷はないとし、それでは復興もしないと述べた。被災地に人がいなくなれば災害ユートピアは終わるとしたものの、ユートピアの特徴は社会に根づいていくと講演を締めた。

第2部では、水上瀧太郎の小説「銀座復興」を成瀬芳一氏が朗読劇として演出し、初演された。劇では関東大震災後の銀座が徐々に復興する様子が、セリフの応酬とナレーションで描かれた。第2部は岩波書店、現代の政治・経済を考える「樫の会」が後援、慶大三田の4学部(文・経・法・商)と福澤研究センターが協力した。公演後には岩波書店社長山口昭男氏より「銀座復興」が岩波文庫で出版されることが発表された。