【映画評論】 ラストゲーム 最後の早慶戦


(c)2008「ラストゲーム 最後の早慶戦」製作委員会

年に2回開催される、東京六大学野球。その中でも、ひと際盛り上がる「華の早慶戦」。筆者は今年の4月に入学したばかりの大学1年生で、早慶戦を経験したことがない。早慶戦といえば神宮球場で観戦するものだが、筆者は映画館で一足早く観戦した。昭和18年の早慶戦を……。『出陣学徒壮行早慶野球戦』と呼ばれた試合には、感動のドラマがあった。

昭和18年。太平洋戦争が激化する中、「敵国の国民的スポーツ」である野球が日本から消え、六大学野球も開催が中止された。多くの大学が野球部の活動を停止していく中、早稲田大学野球部員は、顧問の飛田穂州(柄本明)の下、日々練習に励んでいた。いつか戦争が終わり、試合が出来る日を信じて。

しかし、いよいよ戦況が厳しくなると、学生徴兵が始まってしまう。部員たちの夢が消えかかっていたとき、当時慶應義塾大学塾長の小泉信三(石坂浩二)が飛田の元を訪れ、こう言ったのだ。

「早慶戦やりましょう」

好きな野球ができなくなる現実に苦悩する学生たちにとって、試合はこれ以上にない歓びだった。しかし、この試合が最後の野球であり、終われば戦地に赴かなくてはならない悲しみもあった。様々な思いの中、彼らのラスト・ゲームが始まる。

この作品は、「ひとつのものを貫き、ひたむきにそれを取り組む姿勢の大切さ」を教えてくれる。必死にやり通し輝く野球部員たちの姿は感動的で、私たち学生も共感できるであろう。これは飛田監督の言葉である「一球入魂」の精神だ。

そして、出演している役者、監督の演出からも、一球入魂の精神は伺える。主人公の戸田順治役の渡辺大の眼力や、飛田監督役の柄本明の鬼気迫る表情からは、「野球がしたい」という強い思いを感じた。

最も印象的だったのが、早慶戦開催の話を聞いて、宴に酔う野球部員たちの笑顔だった。それは試合が終われば、戦地へ行かねばならない悲しみを微塵にも感じさせない笑顔。そんな悲しみよりも、今は目前に控える野球を思う存分楽しみたいという、希望に満ちた顔だった。もしかしたら、後々のことを考える暇があるなら、目前にあることに全力で取り組むことも、一球入魂の精神なのかもしれないと、筆者は思った。

ひとつのことに対して必死になることは、泥臭くて格好悪いことかもしれない。しかし、人は何かに対して必死になっているときこそ、一番輝けるのではないだろうか。一度しかない大学生活。この映画を観て、何か必死に貫き通す「一球入魂」の精神を感じてほしい。

(根本孟明)

◆『ラストゲーム 最後の早慶戦』 シネカノン有楽町1丁目、渋谷アミューズCQN他にて、8月ロードショー。
5月15日、三田キャンパス西校舎ホールで特別先行試写会。開場17時30分、トークイベント18時10分、上映18時40分。入場無料、先着順。

ラストゲーム 最後の早慶戦 (角川文庫 ん 29-1) (角川文庫 ん 29-1) (角川文庫) 蛍