全塾ゼミナール委員会は9月29日から南校舎ホールで業界講演会を開催している。将来の展望を定め、学問研究の充実をはかることを目的とする本講演会は、今年で26回目を迎える。各業界の大手企業の方々を招いたこの講演会は、11月29日まで対面・オンラインハイブリッド方式で開催され

広告業界(株式会社博報堂/博報堂DYメディアパートナーズ

華々しい、クリエイティブなどさまざまな理由から人気の高い広告業界。博報堂の大迫さんは、「生活者の心を震わすような体験、価値を作り、世の中の課題を解決するのが広告業界の仕事だ」と語る広告の仕事は、マーケットデザイン(伝えるべき内容)とメディアデザイン(人の集まる場所)を工夫することによって受け手の態度や行為変容を目指す。大迫さんは、コンサル業界などとの差異として、「最後に人間がワクワクするような躍動力があるのか、というのを重視している」と語る。

吉村さんはビジネスプロデュース職の経験から、答えがない問いに考え抜いて自分の答えを出すことが面白いと語る。アルコール飲料の販促イベントにテレビ局やコンビニを巻き込んで開催したことなど、関わった仕事を例に出し、多くのクライアントと向き合い、その利害調整をするビジネスプロデュース職の業務内容を話した。

藤巻さんは自身の就活経験から就活中の塾生にメッセージを送った。「ありのままの自分で勝負する、簡単なようでこれがなかなかできない学生が多い。しかし、演じている自分には無理があり、人事の方もそれを見抜けてしまう。」

公務業界(外務省)

官公庁業界説明会の様子

10月4日は官公庁業界として、外務省から2名が登壇。ともに法学部政治学科出身の大西氏と渡辺氏が、パネルディスカッション形式で講演を行った。

中央省庁の仕事は「国益」に寄与するものだ。「国益」の定義は人によって違う。だからこそ政党が存在し、複数観点から「国にとっての利益」を、協力し合いながら追求する。「外務省が持つ観点は国際社会。世界における日本の、日本人のための職務という大局的な視点です。各省庁の国益へのアプローチを理解しておいてほしい」と大西氏。

外務省の特徴は、国内と国外両方の業務を経験することだ。東京での官僚としての業務、海外での外交官としての業務を交互に経験しながらキャリアを積む。最初の2年間は東京で勤務し、3年目には海外研修に出、次に控える大使館勤務に向けて語学を極める。大使館では外交官となり、習得した言語が早速活きる。他省庁と連携し合って意思決定を下す官僚、安定した国際関係を構築する外交官の二つの側面を持つのだ。

外交において、実際にコミュニケーションをとるのは国と国ではなく「人と人」。必要なのは相手と向き合って交渉し、情報を集める力だ。「相手がいるから国と国との関係は作られる。人というものを意識する場面が多い」と大西氏。渡辺氏は「人との関わりで生きるのは、自分が生きてきた中での経験の積み重ね。今やりたいことを全力でやるのが一番」と参加者の背中を押し、講演を締めくくった。

メディア業界(株式会社講談社・日本テレビ放送網株式会社

10月13日の講演はメディア業界。講談社、日本テレビの合同講演となった。

講談社からは人事の岩崎氏、販売の上ケ市氏、『少年マガジン』編集の原氏の3名が登壇した。

「つくる」編集、「届ける」営業、「磨く」校閲、「支える」管理。総合出版社では複数部署が協力し合い、価値あるコンテンツを作り届ける。

出版社の仕事で活きるのは、自分にあるもの、自分が見てきたものだと語る原氏。学生時代に「あまりモテなかった」からこその「妄想力」が今、光るアイデアを生んでいると話した。上ケ市氏は車メーカーから転職して講談社へ、という異色の経歴の持ち主。「何か語れるものがある人は強い。私の場合は車。無駄な経験はない」

斜陽とも言われる出版業界だが、実際はそうとも言い切れない。出版社が扱うのは書籍のみにとどまらず、講談社にもゲームやメタバースといった新しいコンテンツに挑戦している部署がある。未来を見据えて面白いことを模索し続けている。

岩崎氏は、「出版社でどんなことをしたいかを是非考えてもらいたい。来てほしい人は、打席に立つ人。挑戦の数を増やして」と、学生にエールを送った。

日本テレビからは竹崎氏、大納氏、野見山氏の3名が登壇。バラエティー、ドラマの制作や報道、スポーツに加え、営業や映画、海外事業、新規事業等のビジネス分野も幅広く展開。部門の垣根を超えて全社一丸となる高いチームワーク力で、若いうちからさまざまな挑戦・成長の機会に恵まれる。

テレビの強みは同時に1000万人以上に届けられるメディアであること、そして思いがけない出会いを届けられること。自分の好きなものやアイデアを形にし、多くの人々に影響を与えられるのがテレビ業界だ。大納氏は「会いたい人に会える」ことが日々のモチベーションになっているという。

若者の「テレビ離れ」指摘される今、新たなコンテンツ制作・展開に向け若手が即戦力になるという。自分の「好き」や興味から、新しいものを作り出していく力が今必要だ。竹崎氏は、「自分自身としっかりと向き合い、テレビというメディアを活かしてやりたいことを探してみてほしい」と、これからのテレビ業界に必要な人材を語った。

メディア業界説明会での質疑応答の様子

橋本成哉・三尾真子