COLUMN 司令塔はスーパールーキー

 蹴り上げられた楕円球が、われわれの遥か頭上、空高く舞い上がった瞬間、私はこの男の才能を確信した―。

 早稲田大学SO・山中亮平。1年生ながら、チームを司るSOのレギュラーポジションを獲得した。185㌢、85㌔の恵まれた体躯を兼ね備えた類稀なる才能の持ち主に、今季私は何度も唸らされた。「彼のプレーを生で見たい」。そう思える選手が、現在の大学ラグビー界に一体何人いるか。つくづく強烈な個性は美しい。

 寸分の狂いなきロングパス、軽やかなステップワークを駆使した個人突破、そして高さ・距離十分のキック。今季、彼のプレーを注視する中で個人的に圧巻だったのは、鋭く縦に伸びるハイパントだ。本人曰く「徹底的な反復練習の賜物」とのこと。ラグビーを始めた中学2年時からSO一筋の彼は、とにかく「蹴り続けた」。ハイパント含めキック戦術を多用する東海大仰星高校のスタイルは、彼の成長を促した。FW中心に構築された今季の早稲田のラグビーにも、彼のハイパントは絶妙なアクセントを加えている。

 一見こういった華やかなプレーに目を奪われがちだが、彼にSOとしての心構えを訊いてみると、意外な答えが返ってきた。「ポジション的に常に冷静でなくてはならない」「確実なプレーを選択する」。なるほど。確かに試合中も、プレーに無駄がない。危険な場面では決して無理をせず、例えばキックも状況に応じて的確に蹴り分けている。要は「状況判断能力」に長けているのだ。憧れの元ニュージーランド代表SOカルロス・スペンサーよろしく、時折トリッキーなプレーを見せつつも、あくまで基本に忠実。この落ち着きぶりで、本人が課題と語るディフェンス面で一層の改善が見られたら……。どこまでも厄介な存在となる。

 本稿執筆段階では、慶應対早稲田の全国大学選手権決勝の結果は分からない。ただ一つ確かなこと。それは来年度以降も、この男が慶應の前に幾度となく立ちはだかるということだ。

(安藤貴文)