法務省司法試験委員会は9月10日、今年の司法試験合格者を発表した。今年度は最終合格者が1502人(前年度比23人減)、受験者4466人(同772人減)に対する合格率は33.6%(4.5ポイント増)で、合格率はここ10年間で最高となった。慶大法科大学院からの受験者300人(同1人減)に対し合格者は152人(同34人増)で、合格率は50.7%(同11.5ポイント増)であった。慶大は大学別合格者数で1位、同合格率で京都大、一橋大、東京大に次ぎ4位となった。

 

前年の不調とは打って変わり、例年通りの「司法試験に強い慶大」のイメージを取り戻した。全体の受験者数および合格者数の減少が続く中、合格率は2014年以来5年ぶりに50%を超え、大学別合格者数も首位に返り咲いた。一方、コース別の合格率では、既修コースが58.7%、未修コースが29.3%と依然として乖離がみられる。

今年度、全体の合格者数は政府目標の「年1500人」は上回ったものの、受験者数は4年連続の減少となり、学生の「法曹離れ」に歯止めがかかっていない。その影響もあり、廃校または学生の募集停止を余儀なくされた法科大学院が後を絶たない。

この「法曹離れ」の原因について、慶大法務研究科委員長の北居功(きたい・いさお)教授は「学生の法律への関心が薄れているわけではないが、景気が比較的良く、就活状況も安定していることから、法曹を目指そうとする動機づけが弱まっているのでは」と分析する。また、リーマンショック以後しばらく続いた「弁護士は就職難」という状況が、学生やその親の印象として定着していると述べた。

今年度の試験でも依然、「予備試験合格者」が強さをみせている。予備試験受験者は年々増加し、今年度合格者数は慶大を抜く315人、合格率は81.8%と初めて8割の大台に乗せ、他大学を大きく引き離した。経済的にロースクールに通うことのできない人を救済する目的で始まった予備試験制度であるが、北居教授は「一発勝負で決まるため、点ではなく線で法曹教育を行う司法試験改革の方針を骨抜きにするものである」と眉をひそめる。

全国の法科大学院が抱える課題として、既習コースと未修コース間の合格率の差が埋まらないことが挙げられる。慶大も全国的にみて合格率が高いとはいえ、その差は大きい。未修コースは法学部で4年かけて習うことを1年間で学ぶため、個人の能力差がどうしても如実に表れてしまうが、打開策が見つかっていないのが現状だ。

しかし、法科大学院は決して司法試験の合格を最終目標にしているわけではないという。北居教授は、「法科大学院は専門職学位を付与する機関。試験の結果がどうであれ、ロースクールで得た学位、そしてロースクールで学んだという事実は社会で高く評価されている」と語った。