【こちら三田探偵事務所】東京タワー、階段で挑戦

 どうも最近運動不足で、体がなまってきました。何か良い解消法はないでしょうか。
(経3男)

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所長は、依頼を見るやいなや「とっておきの方法がある」と所員O(商3男)に言った。

「とっておきって、一体何なんですか」「三田キャンパスからも見えると思うけど、東京タワーに昇るんだよ」

Oが「東京タワーに昇ったって、大した運動にはならないんじゃないですか」と疑問を呈すと、すかさず所長は「確かにエレベーターで昇れば別に運動にはならないよ。だけど、東京タワーは休日なら階段でも登れるんだよ」と返す。

「ひょっとして、それは俺に階段で昇って来いって言ってるんですか」と、O。ニヤニヤしながら所長は「察しが良いな。今度の日曜日に登って来い。たかだか、600段だよ。その一部始終を依頼者にレポートしてやるんだ」と、Oに有無を言わさず命じた。

所長室を出て、Oが「何で俺が休日返上してまで、そんなことしなくちゃいけないんだ。残業代も出さないくせして」と愚痴っていると、S(経3男)とJ(理3男)が「どうしたんだよ」と近づいてきた。Oが2人に今までの経緯を説明すると、「面白いじゃん。俺らも一緒に付き合うよ」と、2人は案外乗り気だ。

当日、3人は三田キャンパスの東門から徒歩で、20分程かけて東京タワーの前にやってきた。煙草の吸い過ぎが祟ったのか、Jは肩を上下させながら「俺はもうダメだ。体力的に階段では昇れそうもない」と、東京タワーを目の前にして弱音を吐いた。

続けて、「そうだ。俺はエレベーターで昇る時間を計測するから、お前等が階段を昇るのとどっちが早く上に着くのか競争しようぜ」と意味不明な提案をしてきた。すると、Sが「なるほど。エレベーターは乗る時と、チケットを買う時に結構待ち時間があるしな。じゃあ、競争しようぜ」と、あっさりJの提案を受け入れた。

OとSは階段のチケット売り場で待つことなく券を購入し、早速昇り始めた。最初は順調に行き、あっという間に200段目まで到達した。
「もう3分の1か」「景色も綺麗だし、大した運動にならなそうだな」と、会話をしながら余裕な2人。

しかし、その後300段、400段を上っていくうちにいくと、ペースは着実に落ちた。手すりを使いながら「う~ん、地味だけど足にくるなぁ」「それにかなり暑くなってきた」と、コートを脱ぎ、手すりを使い始める。

最後は軽く息切れしながら、10分47秒でゴール。ゴール地点では、階段で昇った証として、非売品の認定証カードがもらえる。「これは自慢になるなぁ」とS。「いや、ただのネタだろ」

「そういえば、Jはまだかな」と、展望台を探すも見当たらない。3~4分すると、Jが姿を現したが、妙に顔色が悪い。

「どうしたんだよ。負けたから悔しいのか?」「時間は15分かかって負けたけど、そんなんじゃないよ」「じゃあ、どうしたんだよ」「並んでるときに、周りが家族づれとか、カップルばっかで、一人で並んでる奴なんて俺ぐらいだったんだよ。正直、あの孤独はトラウマだよ……」。確かに東京タワーは1人で昇るものではない。

「まあ、とりあえず分かったのは、良い運動にもなるし、急いでる時は階段の方が良いってことだな」「急いでる奴は東京タワー昇らねぇよ」

(コグマニケイ)