慶應塾生新聞会 三田オフィス
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【定年退職者インタビュー】理工学部 金田一真澄教授

国語学者・金田一春彦の長男として生まれる。祖父は金田一京助(言語学者)、弟は日本語学者。1971年に早稲田大学理工学部を卒業し、研究科修士課程を修了。また同大学文学研究科修士課程を修了し、その後東京大学人文科学研究科博士課程を1988年に修了する。学位は文学。翌年に慶大理工学部専任講師になり、同助教授を経て現職に至る。趣味はテニス、自然散策、農作、読書。退職後は新たな学問分野にも積極的に研究対象を広げ、著作にまとめる夢を持つ。

今年3月31日をもって理工学部の金田一真澄教授が退職される。金田一教授の専門はロシア語学・言語学であり、授業ではロシア文学の教鞭もとってきた。マトリョーシカが飾られた研究室で今の心境やこれまでの教授生活について語っていただいた。 (向井美月)

定年を迎えようという今、仕事がばたばたと重なっていてそのことについて考える暇もないほどだという金田一教授。退職するという実感は、3月中は湧きそうにないが、4月になればきっと湧くだろうと穏やかな表情だった。

退職したあとは、農地を借りているという八ヶ岳に家を構えて晴耕雨読のような生活をしたいと話す。また、名誉館長に任命される予定の北杜市中央図書館で月に一回、地元の人に言葉に関する塾なども開いていくつもりだという。しかし、だからといって慶應から離れることはなく、これからも非常勤として講義をもつとのことだ。

ロシア語の世界へ足を踏み入れたきっかけ

もともと金田一教授は早稲田大学の理工学部で電子工学を学んでいた。ロシア語や言語学の世界へ足を踏み入れるに至ったのは、いざ大学卒業が見え、就職を考えていこうという時期のことだったという。

元来のんきな性格で何かについて深く悩むことのなかったという教授は、就職率のいい理工学部で、「このまま何に悩むこともなく生きていていいのか」とふと思い直し、新しい世界に飛び込むことを決めた。そこでロシア語を選んだのは、当時技術の最先端であるソ連の文献を読むことが多く、身近な言語であったためだ。

ロシア語について教授は、「文法事項や規則が極めて多く、科学的な言語であることが魅力だ」と話す。厳格な文法構造を持つロシア語は、文学においても真面目な性格を持つ。そういった部分が理系の自分に合っていたから、と金田一教授は語る。

日本語については、ひらがな、カタカナ、アルファベットといった文字の多様さやそこからくる文字の見た目に対する感性が優れている。また、オノマトペに代表される音へのセンスも秀でているところが魅力であると語る。わずかに音の表現や文字の表現が違うだけで、そこから得られる印象はがらっと変わる。そういった細やかな言葉への意識というのが、日本語の美しさにつながるということである。

金田一教授が昨年作詞された小学校の校歌にはオノマトペがふんだんに使われており、教授のかたる日本語の魅力を表現している。小さいうちから日本語独特の表現に触れ、感性を磨いて欲しいという思いからとのことだ。

教壇に立って抱いた思い

初めて教壇に立った時のことを、自身が理工学部出身のために、理工学部で教えることになんら違和感を抱くことはなかったと語る。学生時代は決して優等生ではなかったと語る教授は、劣等生の気持ちがよくわかったという。「彼らのことを何でもわかるような気がして、教えることがとても楽しかった」と振り返る。

塾生へのメッセージ

塾生に向けて、「二兎を追わなければ二兎は得られない」という言葉をいただいた。塾生は高いポテンシャルを持っているのだから、あらゆる興味を追いかけて、複数の専門分野を得るくらい欲を出してほしいという思いからの言葉だ。アインシュタインがバイオリンを弾くように、いくつものことができるというのはかっこいいし、塾生ならばそれができるはずだという力強いメッセージである。