低所得層への配慮が課題

社会保障と税の一体改革について説明された

法学研究所主催の講演会「『社会保障と税の一体改革』はなぜ必要なのか?」が先月4日、三田キャンパス北館ホールで行われた。講師として財務省大臣官房参事官の山沖義和氏、コメンテーターとして経営管理研究科教授の太田康広氏が招かれた。
同講演の趣旨は、これからの日本で実施される「社会保障と税の一体改革」の概要やその背景と必要性、そして今後の課題について分かりやすく解説すること。
日本の社会保障の予算額は急速に伸びており、政府債務残高は太平洋戦争末期と同水準にあるほど危機的。2050年には一人の若者が一人の高齢者を支える時代が訪れると予測される。一体改革の実施は社会保障の充実・安定化と財政健全化の同時達成への第一歩。
景気の影響が少なく、特定の者に負担が偏らない消費税は、その高い安定性と中立性から財源調達力に優れる。
消費税率の5%引上げによる増収分は全額社会保障の財源となる。現行制度での消費税収のうち、国の収入分は高齢者向けの経費に充てられているが、消費税率引上げ後は、子育て支援、医療介護、年金など全世代対象の社会保障経費に充てられる。
今後の課題は、社会保障制度のさらなる改革、低所得者への配慮、経済状況の好転、課税の適正化と価格転嫁対策、再分配機能の回復など。山沖氏は「まだ道半ばで決める必要のあることが多い。財務省では職員を派遣して講演し、皆さんの疑問点や意見を集めたい」と述べた。山沖氏の解説後に太田氏は、「余分な社会保障関係費のドラスティックなカットが必要」と税収の効率的な運用について加えて解説した。