11月24日、第一校舎122教室で行われていたのは『慶應寄席』。昼下がりの14時からは8代目桂馬網(バーネット)さんが主任で幕が上がった。

教室内に足を踏み入れると、教室とは思えない本格的な寄席の舞台が。落語の紹介がコント形式で披露され、スケッチブックを上手く活用した馬網さんの紹介や注意喚起が行われたりしているうちに、観客はぞくぞくと集まり客席はほぼ満員、皆退屈することなく馬網さんの登場を待った。

先輩2人による馬網さんの紹介

そして、大きな拍手とともに馬網さんが舞台に現れた。座布団に座るな否や彼女が話始めたのは、なんと自身が愛してやまないというボーイズラブの話。父へのBL布教のエピソードで笑いをかっさらい、話題はスムーズに古典落語へ移って行った。

落語の醍醐味といえば、落語家の一人何役にもわたる演じ分けだ。馬網さんの語った話でも、親孝行な浪費家お松、とにかく元気なお祭り女お茸、BL好きのお梅の三人娘の演じ分けは見事で、何人もの人物が舞台にいるのではないかと思うほどであった。喋り口調は江戸っ子そのまんまなのに、飛び出してくる単語は現代的。「(おとっつぁんの葬式に呼ぶ)友達は55000人かな」「東京ドームじゃないか」攻め、受け、メリバ(メリーバッドエンド)といったBL用語も飛び出し、今までにない落語体験に脱帽していた。

本格的な寄席の舞台で語る馬網さん

公演を終えた馬網さんこと後藤桃香さんに落語の出来を聞くと、笑顔で「自分の中では一番良い」との答えが。また、「2年生がメインの三田祭で、先輩方に盛り上げていただいて感謝しかないです。お客さんが集まるまでの時間稼ぎとして先輩方が即興で登壇してくださって、そういった臨機応変なところも慶應寄席のいいところだと思っています」とサークルの先輩への感謝も語ってくれた。

寄席は三田祭の4日間行われている。三田祭の喧騒から少し離れ、伝統と新しさを併せ持った大声で笑える空間にぜひ足を踏み入れてほしい。

 

鬼木元子