《日吉研究所2020 No.10》HI, HOW ARE YOUの世界へようこそ

日吉に、慶應生の中でも知る人ぞ知るカレー屋がある。ぶらぶら歩いていれば目にするようなお店ではなく、今回紹介したいのは、裏路地を三階まで上がると出逢える隠れ家のようなカレー屋さん、HI,HOW ARE YOUである。今回我々がいただいたのは、注文するお客さんが多いというパキスタンカレーと、辛いのが苦手な女性に人気なバターチキンカレーである。

店長さんに話を聞くと、おすすめのメニューを聞かれてもないと答えるそうだ。その理由として「全部味やベースが違い、それぞれコンセプトが違うから」という。

そもそもなぜ、場所として日吉を選んだのか。その理由のひとつとして、味覚は地方に行けば行くほど保守的になっていくものだと思っていて、とがった味のうちの店は都心のほうがいい」というのがあった。また、「学生街には、変わったおやじがやっている変わったカレー屋が必ず一軒なきゃいけない」との考えを持っており、創業当時の日吉にはそういうお店がなかったため選んだそうだ。

店長は、「俺の経験上、とがったカレーが好きなのは音楽をやっているバンドサークルの奴らが多く、そういう人たちは隠れ家的な雰囲気の方が好むだろうし、飲食店ではあまりないけれど三階で、日吉にはカルチュラルな雰囲気のお店が少ないから、かっこいい音楽もかかった隠れ家的なお店にしたかった」という。カレーの味だけでなく、お店の場所、雰囲気などにも細かなこだわりを感じた。

お店をやるうえで大切にしていることは、「嘘をつかない」ことだという。味についても、お客さんに対してもそうである。一般的なお客さんが求めるものに応えていく店とは対照的に、自分が作りたいと思うものを提供している。「現在、いろいろな仕事がある中で、なんでお金が入ってくるかわからない仕事も多いが、自分が作ったものを出して、その対価をもらうという、お客さんと一対一の関係性である食べ物屋さんという仕事に魅力を感じる」という。

お店をやっていてよかったと思う瞬間を尋ねると、「店では全然しゃべらない人が、両親を連れてきてくれると、家で店の話をしてくれている風景が浮かぶからうれしい」と照れ臭そうに話してくれた。

最後に「お店のコンセプトとしては‶面白い″。店の中もそうだし、カレーも食べたことない味だろうし、食べた人の好奇心を刺激するような店でありたい」と店長は語った。

明るい雰囲気の店内

辛さは痛みであり、ある種の自傷行為であり、外界を知ろうとする行為であるともいえる。挑戦して慣れていくことで食べられるようになるらしい。記者も日常の中に刺激を求めて、パキスタンカレーに挑んでみたいと思う。初めての世界に飛び込んでいく人も、新学期気持ちを新たに一歩知らない世界に踏み出したい人も、カレーや店内への強いこだわりだけでなく、店長から感じられる人生へのこだわりの世界HI, HOW ARE YOUへ迷い込んでみてはいかがだろうか。

 

(小久保清香)

※取材は2020年2月に行いました。