「キャンパスへ向かう平日の朝が憂鬱です。もっと楽しく通学できないものでしょうか」

インターネットで調べると「エクストリーム出勤」という言葉を見つけた。出勤前の時間に、海水浴などのアクティビティを思いっきりした後、平然と出勤することを意味する。記者は「エクストリーム通学」を実践することに決めた。

土曜日の午前5時。ここからエクストリーム通学は始まる。日の出前で真っ暗の中、記者は四方山に囲まれた、北アルプスの玄関口・新穂高に立っていた。背には20キロのザック、額にはライトを付け準備する。ワンダーフォーゲル部員でもある記者は、2年ぶりの本格的な登山に緊張がぬぐえないまま、2泊3日の行程を始めた。

次第に雨が強くなっていく。間もなく記者は自分のポケットから振動音がしていることに気がついた。防水非搭載のスマートフォンが悲鳴を上げていたのだ。後で出した時には時すでに遅し。大自然を前に文明の利器はお陀仏になってしまった。

翌日は今回の目玉、黒部五郎岳へと向かった。「岩がゴロゴロ」していることから「五郎」という名が付いたほど、縦走路は岩だらけで歩きづらい。なかなか思うように歩けず、行程時間は10時間のはずが15時間。翌日の行程が延びれば授業に間に合わない――遅れている後輩の心配より授業の心配が先行する。Sが欲しいんだよ、Sが。

美しいカールが特徴の黒部五郎岳(スマホ故障のため提供)

月曜日朝5時、帰路でありながら通学という矛盾を抱えながら、下山を急ぐ。前日の5時間延が嘘のように前へ前へと進む。

めでたく予定通りの時間で下山。富山ブラックをすすった後、2‌0‌0キロ離れた三田へ向け、13時発の新幹線へ飛び乗った。歩行時間計24時間にも及んだ登山で体力は限界。新幹線の車内では深い眠りに落ちた。

(イメージ)

16時25分、三田キャンパスの某教室に到着。授業は出席重視、そう簡単に休んでいられない。最後、いよいよPC上での出席報告。しかし画面にはその旨が表示されない。先生が一言、「今日は機材トラブルのため出席は取りません」

(三流亭熟内)