11月23日、秩父宮ラグビー場において、ラグビー早慶戦が行われた。対抗戦一位の座をかけて学生王者の早大に挑んだ慶大であったが、早大の前に0―54と完敗。この結果、一試合を残して早大が対抗戦5連覇を達成した。対抗戦3位に終わった慶大は、18日に開幕する全日本大学ラグビー選手権1回戦で、京産大と対戦することになった。

 月23日 秩父宮 ●
 【慶大0―54早大】

「2つ目のトライが、チームの雰囲気を変えた」。早大・清宮監督が試合後振り返ったように、前半38分の早大FL青木のトライが、試合の明暗を分けた。

 前半は序盤から、早大が攻め慶大が守るという防戦一方の展開。しかし、慶大は激しいタックルで応戦し、早大に最後の一線を越えさせない。早大も、前半18分にトライを決めたものの、思ったように点が入らない焦りなのか、肝心なところでミスを繰り返す。慶大にとって、ここまでは「練習通り」(竹本主将)の展開であった。そして、前半終了間際、早大ゴール前5mでのラインアウト。サインプレーを使って早大を攪乱しようとした作戦が裏目に出る。結局早大にボールを奪われ、カウンターからトライを許してしまう。これで勝負あった。

 「地力の差が出てしまった。完敗です」とは松永監督・竹本主将両者の弁。ただ、順当にいけば大学選手権2回戦で早大と再びあいまみえることとなる。「確かに、50点という点差は大きい。だが、早大を目指すことで自分達もレベルアップできる。持ち味である粘り強いディフェンスを80分継続していくには練習しかない。一から出直しです」(竹本主将)。

 今年度『打倒早稲田』を掲げ、「地獄」と呼ばれる夏合宿を乗り越えるなど、さまざまな困難に打ち勝ってきた慶大蹴球部。無得点での大敗というこの借りを返すには、次回の対戦で早大を倒し、国立での大学選手権準決勝・決勝に駒を進めるしかない。残された時間はあと僅か。慶大蹴球部の戦いは、これからが正念場である。
 
 
 【総評】 高かったワセダの壁次こそ打ち破れ

 05年度関東大学対抗戦の全日程が終了した。
 慶大蹴球部にとって今年は「改革」の一年となった。三宅前監督の辞任に伴い、慶大初のフルタイム監督として松永敏宏氏が蹴球部監督に就任。また、日吉下田地区にある蹴球部グラウンドが全面人工芝へと変わった。そして大相撲の高砂部屋への出稽古や、気功の先生に呼吸法や姿勢を学びに行くなど、ハード・ソフト両面において積極的に「改革」を推し進めていった。

 そんな中、今季の関東大学対抗戦に臨んだ慶大。昨季から続く「ディフェンス重視」のコンセプトはより一層選手の間に浸透し、相手チームをことごとくロースコアに抑えていった。特に圧巻だったのは明大との一戦。低く力強いタックルで、明大の重量FWに全く仕事をさせなかった。また、昨年「一年生カルテット」と呼ばれ、チームに勢いをもたらした金井・山田章・中濱・小田の4選手も、今では中核を担う存在となった。これに明山・川本らの新戦力が絡み合い、チームは試合を重ねるごとに安定感を増していった。

 ただ、課題も山積である。「自分たちで(試合の)流れを変える力がない」と松永監督も語るように、チームが若い分、いったん相手に主導権を握られると試合をコントロールできなくなる悪い傾向が見られた。また、対抗戦を通じてラインアウトのミスを連発するなど、細かいところでの詰めの甘さも目立った。早大戦では、これらの点をつかれてしまい、屈辱的な敗戦。今、チームに必要なのはピッチ上の選手全員が共通のビジョンを描くことである。 

 対抗戦を3位で終了した慶大は、12月18日瑞穂公園ラグビー場で行われる京産大との全国大学選手権1回戦に臨む。ここで勝利を収めれば、 25日の2回戦で早大と対戦する可能性が高い。実際、今年半年間の豪州ラグビー留学を経験した山田章も「昨年より(早大との)差は縮まった」と手ごたえを感じている。全蹴球部員の悲願である『打倒早稲田』を達成するためには、京産大との1回戦で勝利を収めることが必須条件となる。期待したい。 

(安藤貴文)