国境を越えた交流を

国際化が叫ばれて久しい昨今、国際交流に興味を持つ慶大生も多いのではないか。そんな慶大生に注目してほしいイベントがある。日本とアメリカの学生同士の交流が図れる第67回日米学生会議だ。

日米学生会議は、1934年に日米関係の悪化を憂慮した4人の日本人学生が、日米双方の学生の議論を通じて相互理解を深め、和平を保つことを目的に設立したことに始まる。太平洋戦争や資金難などによる中断を乗り越え、今年で創設81年目を迎える。

4月に参加者が決定すると、複数回にわたる合宿や自主研修などを通じて本会議への事前準備を重ねる。本会議では、分科会という同じ興味を持つ参加者同士がグループごとに議論を行い、国を超えた交流が行われる。

日米学生会議には、何事についても思考し、自分の意見を持つ学生が日米問わず多く集まる。そんな彼らと長い期間をともにすることで自分自身の思考力も高められる。互いの意見が激しく衝突することも少なくない。しかし本会議中には共同生活で生じる不安や悩みを吐露できる機会が与えられるので、仲間とのすれ違いも解消される。衝突を乗り越えより強い絆が生まれ、会議終了後も連絡を取りあう参加者も多い。

国内外で活躍する数多くのOB・OGがいることも日米学生会議の強みだ。元内閣総理大臣の宮澤喜一氏や脳科学者の茂木健一郎氏をはじめ名だたる卒業生を輩出している。参加者はOB・OGと交流する機会を得られ、横のつながりだけでなく縦のつながりも充実している。

日本とアメリカが隔年で開催地となり、今年は日本で開催。広島、島根、京都、東京を巡る。昨年度も会議に参加し、今年度会議の実行委員を務める岡崎栞さん(政2)は広島を担当する。戦後70年にあたる今年、被爆地広島で平和について議論する。「被爆地である広島の生々しい原爆の被害を見聞きすることで広島の方の感情を汲み取って議論を進めたい」と話す。

「日米学生会議では人という大きな財産を得られる。夏休みを1ヶ月使っても絶対に後悔しない」と岡崎さん。かけがえのない経験ができるのは間違いない。 (河合遥香)