先月19日に開かれたメディア・コミュニケーション研究所公開講座では読売新聞特別編集委員の橋本五郎氏が招かれた。現在、日本の政治情勢は激しく変動し、内閣を始め政党に対する国民の支持率は低下の一途をたどっている。橋本氏は同講座を通して日本を取り巻く閉塞感を打破する人物の必要性を説き、リーダーに求められる要件について論じた。 (安田麻里子)

難局打破するリーダー像を提言

現安倍政権と過去政権から考察
メディア・コミュニケーション研究所公開講座「真のリーダーとは何か」が先月19日に三田キャンパス北館ホールにて開催された。講師として読売新聞特別編集委員である橋本五郎氏が登壇した。橋本氏は、民主党政権から自民党政権に変わった今後の政治、リーダーのあるべき姿について歴代の総理のリーダーシップにも触れながら解説した。
まず安倍内閣について、第一次内閣での国民投票法や防衛庁設置法改正、そして第二次内閣での「アベノミクス」と呼ばれる一連の経済政策による株価上昇などを評価。第二次安倍内閣は第一次内閣の反省及び民主党政権の反省をふまえていると評した。
だが、政権のセーフティネットや、円安によって苦しむ人々の存在に目を向けることが未だに不十分だと分析。「政治は全能ではなく、できることは限られている」としたうえで、安倍内閣は勝利した参院選後にこそ真価が試されると述べた。
さらに、政治は一人の手で成し遂げられるものではなく、その点につき現在の安倍政権は「それなりに考えた布陣になっているが、仲間割れで民主党が内部から崩壊したことにもっと学ばなければならない」とも橋本氏は懸念を示した。
同講演会の後半では、歴代の内閣総理大臣の政治に細かく触れつつ、リーダーに求められる要件について論及した。橋本氏はリーダーの条件として、断固とした姿勢、周到な準備、深い人間性・人徳、助けてもらう謙虚さを挙げた。このリーダーシップの究極の姿としてイギリスのサッチャー首相が挙げられるという。最高指導者は断固として自らの意思を示すことがまず必要であると主張した。
さらに総理大臣には、当面する課題解決、中、長期に渡って国民に希望を持たせること、後を継ぐ人間の教育が求められるという。また「総理大臣は誰でも務まるものではない。国民の生命と財産を預かるため一秒一刻の安息も許されないというような覚悟が必要だ」とも述べた。
そして同講演の最後に橋本氏は地方を顧みない現在の政治姿勢に対して苦言を呈した。橋本氏は秋田県琴丘町(現・三種町)生まれであり、今の政治家たちが地方の過疎化や高齢化に何の手も打たないことに対してこれまでにたびたび言及していた。生徒数の減少により閉校した母校に約2万冊の蔵書を寄贈し「橋本五郎文庫」をオープンさせ、地元の人々の憩いの場を作り上げてきた。
橋本氏は地方の再生は日本の再生であると強く主張。「地方の年寄りの孤独の深さに目を向けてください」という言葉で講演を締めくくった。