「スペシャルオリンピックス(SO)」は、知的障がいのある人の自立や社会参加を目的とした国際的なスポーツ組織だ。現在、その日本支部の一つである「スペシャルオリンピックス日本・東京(SON・東京)」の理事長を務める真壁理氏に、SO活動やその意義についてお話を伺った。
・経歴
慶應義塾中等部に入学し、1974年に工学研究科博士課程修了。その後明治製菓株式会社に入社、医療用医薬品開発に従事。その間MITで2年間ポスドクとして遺伝子研究に従事し、2009年常務執行役員として医薬品2品目を上市し退社。すぐにSO活動に参加して、2021年からSON・東京の理事長に就任。
・スペシャルオリンピックス日本・東京とは
「スペシャルオリンピックス」は、知的障がいのある人がスポーツを通して自立や社会参加を目指す国際的なスポーツ組織だ。1962年に米国で、ジョン・F・ケネディ元大統領の妹であるユーニス・ケネディ・シュライバーが、知的障がいのあった姉のためにデイキャンプを行ったことが発祥だという。その後、1968年に非営利組織として「スペシャルオリンピックス」が設立。現在では、世界各国でオリンピック競技種目に準じた各種スポーツプログラムが実施され、「アスリート」と呼ばれる知的障がいのある登録者の数は174か国、約520万人にも及ぶ。
日本では1994年、細川護熙元首相の夫人である細川佳代子氏らによって「スペシャルオリンピックス日本」が設立。現在では47の地区組織に、約8000名のアスリートが登録するまでになっている。「スペシャルオリンピックス日本・東京」はその地区組織の一つであり、約1800名のアスリートが登録。17種類のスポーツプログラムと6種類の文化プログラムに取り組んでいる。そのすべての活動はボランティアが無償で支援している。
・理事長として日々精力的に活動
真壁氏は「SON・東京」の理事長として、組織全体の統括を担っている。運営に関する定期的な会議を主導しつつ、休日にはプログラムやイベントへも直接足を運ぶ。また、元々はバスケットボールのコーチとして参加したこともあり、現在でも月に3回ほどあスリートと共に汗を流している。
・参加のきっかけは「楽籠クラブ」先輩の勧め
今でこそ理事長を務めるまでになっている真壁氏だが、会社員時代はSOについてはほとんど知らず、ボランティア活動の経験も無かった。それを大きく変えたのは、退職後に、大学時代所属していたバスケットボールサークル「楽籠クラブ」の先輩から受けた誘いだった。楽籠クラブは塾内でも伝統のあるバスケットボールサークルで、SOに参加することがある種の慣習のようになっていたため、その誘いも自然な流れだった。現在も18名の楽籠クラブOBが、SON・東京に参加している。
・アスリートと触れ合う中で、ボランティア活動の意義に気付く
先輩の誘いに乗ったものの、当初は参加にそれほど乗り気ではなかった、という真壁氏。それが、アスリートと触れ合う経験を重ねることで、徐々にSOが自身にとって欠かせないものに思えるようになっていった。バスケットボールのコーチとしてアスリートと共に汗を流すことで、自らの中に喜びや楽しさが芽生えていったのだ。「障害の有無に関わらず、ともに生きるインクルーシブな社会の構築」というSOの理念にも、心から共感するようになった。そんな真壁氏の真摯な姿勢と、豊富な社会経験が評価され、2021年にはSON・東京の理事長に就任することとなった。
ボランティア活動の意義を真壁氏は、「何歳になっても自分を前に進めさせてくれること」と話す。「SOでのボランティア活動が、今まで知らなかった世界を見せてくれて、多くの学びも得られた。ボランティアは他人のためだけでなく、実は自分のためにもなるということを、多くの学生諸君には知ってほしい」。
・課題は日本での知名度の低さ
真壁氏が考える日本のSO活動が抱える課題は、知名度だ。米国では90%を超える知名度があるのに対し、日本のそれは約10%程度。つまり、日本人の10人に9人は、そもそもSOの名前さえ知らないことになる。こうした知名度の低さが、寄付に支えられている組織にとって財政的に大きな影響を及ぼしている。また、知名度の低さはボランティア獲得に際しての高いハードルともなっている。「資金やボランティア獲得のためにも、なんとかして知名度を向上させていきたい」という。
・「全国大会」が2026年、東京で開催
知名度アップのきっかけとして期待しているのが、来る6月と9月に東京で開催される「SON夏季ナショナルゲーム」だ。4年に1度の夏季競技の全国大会であり、アスリート・コーチ・ボランティアなど、総勢6500人が参加。アスリートにとっては日々の練習の成果を発表する重要な機会である。さらにこの大会は、2027年にチリのサンティアゴで開催予定の「SO夏季ワールドゲーム」の選考も兼ねているということもあり、参加者にとっては大きな夢を描ける場といえそうだ。「こうした機会にぜひ観客として会場に足を運び、SOの魅力を体感してほしい」と真壁氏。興味のある方は、記事に添付されているURLから詳細をご覧いただきたい。
・塾生へ伝えたいこと「まずは何にでもチャレンジして欲しい。」
「初めは誘われて参加しただけのSOだが、今では自分にとって欠かせないものとなった。自分の人生にとって大切だと思えるものに、いつ出会えるか分からない。しかし、そうした出会いにつながるチャンスは、必ずどこかに存在している。だからこそ、興味を感じたことにはとりあえず触れてみてほしい。それがSOのボランティアであったら、これ以上嬉しいことはないですね」と、真壁氏はインタビューを締めくくってくれた。
(稻山昂大)
SON・東京のボランティアについてはこちらから
➤ https://www.son-tokyo.or.jp/volunteer/