慶應義塾大学には、多種多様なバックグラウンドを持つ学生が集まっている。しかし入学して早々、ある偏りがあることに気づく。それは「出身地」だ。実際、慶大生の約8割が一都三県の出身者で占められているというデータもある。
私は新潟県の公立高校出身だ。地方から上京し、慶大での生活を始める中で、関東圏、特に私立高校出身の友人たちとの受験戦略の違いに大きな衝撃を受けた。今回は、地方と関東の高校における受験環境の違いについて、私の実体験を交えて綴りたい。
地方公立高校の「国公立信仰」と負担
地方の公立高校には、根強い「国公立至上主義」が存在する。基本スタンスは「クラス全員で共通テスト(5教科7科目)を受ける」ことだ。たとえ第一志望が早慶などの私立大学であっても、学校の方針として数学や理科基礎の履修が求められる。私の高校は、高3の冬まで5教科7科目を全員が履修し、定期テストの負担もかなりのものだった。このカリキュラムは、国公立大学を目指す上では王道だが、慶大のような試験が独自試験のみの大学を目指す上では弊害ともなり得る。本来なら英語や地歴の難問対策に充てるべき時間を、受験に使わない数学や理科の対策、共通テスト対策に割かざるを得ないからだ。
関東私立高校の「合理的選択」と強み
一方で、関東の私立高校出身の友人の話は対照的だった。
彼らの多くは、高2や高3の早い段階で「私立文系コース」等に分かれ、受験に不要な科目を一切勉強しないという選択が可能だったという。中には「数学・理科基礎は高2で終わった」「数1だけしか履修していない」という友人もいた。もちろん関東の高校全てがそうではないが、この合理性は、私大受験において圧倒的なアドバンテージとなる。
彼らは浮いた時間をすべて、難関私大特有の、重箱の隅をつつくような難問の対策に充てることができる。その結果、3教科の完成度が極めて高い「私大特化型」の受験生となり、強力なライバルとして立ちはだかるのである。
情報と環境の「アウェイ感」
カリキュラムだけでなく、得られる情報の質にも差がある。
地方の高校教師は地元の国公立出身者であることが多く、東京の私大入試の複雑な方式に必ずしも精通していない。「とりあえず国公立を目指せば潰しが効く」という指導になりがちなのが実情だ。対して関東では、周囲に早慶MARCH志望が多く、塾や予備校の対策も大学別に特化している。過去問の傾向や穴場学部の情報が、自然と耳に入ってくる環境がある。
さらに、地方勢には物理的な「アウェイ感」ものしかかる。東京への受験はまさに遠征だ。早慶などは地方会場がないことが多く、本キャンパスでの受験が必要となる。不慣れなホテル泊、満員電車での移動など、試験本番以外のストレスは計り知れない。移動日を含めたスケジュール調整や体力温存も、合否を分ける重要な要素となる。
地方出身受験生へ
ここまで読んで、地方と都会の間に横たわる差に、不安を覚えた人もいるかもしれない。しかし、ハンデがあるという事実を知ることは、諦める理由ではなく、戦い方を変える合図だ。むしろ、自分の置かれた環境を客観的に見つめ、今の自分に何が足りないのか、合格のために真に必要なものは何なのかを、冷静に考えるきっかけにしてほしい。
学校の指導が全てではない。自分の合格に必要なものは何か、シビアに見極める強さを持ってほしい。アウェイの環境を跳ね返し、執念で勝ち取った合格の喜びは、何物にも代えがたい。春、日吉のキャンパスで待っている。
(和田圭太)