2025年7月20日、第27回参議院議員通常選挙が行われた。総務省が発表したデータによると、全体の投票率が58.5%であるのに対し、18、19歳の投票率は計41.7%と、かなり低い結果になった。若年層の投票率の低さは、長年にわたる課題である。今回はこの課題の解決のための手段として、不在者投票制度を紹介する。
住民票を移さずに1人暮らしをしている学生は選挙に行けない?
若年層の投票率の低さの原因として、若年層の政治に対する無関心や情報不足などが様々なメディアによって挙げられているが、ここでいう「若年層」である我々の中には、別の要因で選挙に行けない人もいるのではないか。それは、「住民票を移さずに1人暮らしをしている学生」だ。住民票を移していないと、投票に必要な投票所入場券が現住所には送られず、結果的に現住所の選挙区で立候補した候補者には投票ができない状態に陥ってしまう。
そもそも、引っ越しをする際には住民票も移す必要があるのだが、大学生や専門学生など、実家に頻繁に帰省する、または卒業後に実家に戻る予定がある学生は、1人暮らしをしている住居が「仮住まい」として扱われ、住民票を移していなくても違法とはならないケースもある。実際、明るい選挙推進協会のデータによると、高校卒業後、保護者と同居していない学生のうち、住民票を移しているのはわずか26.4%である。
不在者投票制度という手段
確かに、住民票を移さずに1人暮らしをしている学生は、現住所の選挙区で立候補した候補者に投票することはできない。しかし、選挙期間中に名簿登録地以外の市区町村に滞在している有権者の投票を可能にする、不在者投票という制度を使えば、それぞれの実家の選挙区で立候補した候補者に現住所の選挙管理委員会で投票できることはご存知だろうか。今回は、この制度の利用方法のうち、1人暮らしの学生の多くが住民登録をしている、いわゆる実家がある地域である名簿登録地の選挙管理委員会にオンラインで不在者投票証明書を請求する方法を紹介する。
不在者投票証明書の請求方法
請求の申請に必要なのはマイナンバーカードとスマートフォンだ。まず、スマートフォンで「マイナポータル」というアプリをインストールする。ログインボタンを選択し、自身のマイナンバーカードをスマートフォンで読み込むとログインができる。ページ下部の「さがす」ボタンを選択し、「不在者投票」というワードで検索をかけると、各々の名簿登録地で選挙が告示または公示された日以降であれば、申請のフォームが表示される。それを開き、必要事項を入力すれば申請は完了だ。この作業は、投票日の1週間前までに済ませておくと安心だ。
必要書類を持っていざ投票
申請が済むと、現住所に不在者投票証明書と投票用紙、封筒と名簿登録地の選挙区の立候補者の名簿や政策がまとまった用紙が郵送される。郵送の方法は各自治体によって異なるため、手元に書類が届くまでに何日かかるかは断定できないが、大抵の場合1日から3日の間に届くことが多い。書類が届けば、あとは投票日の前日までに滞在先の市区町村役場に投票に行くだけだ。
実際に投票する際に、いくつか注意すべき点がある。一点目は、実際に投票する候補者の情報が入ってきづらい、という点だ。不在者投票制度を使って投票できるのは現住所とは離れた選挙区なので、街頭演説やポスターによる候補者の情報は入ってこない。手元の資料やインターネットを使って調べ、自分なりに候補者を吟味する必要がある。二点目は、投票することができる場所が限られている、という点だ。土地勘も地元ほどはない現住所の近辺において、不在者投票を受け付けている投票所を探すのは手間がかかる可能性がある。市区町村役場、いわゆる近所の市役所や区役所に行くのが最も確実な方法だ。
手続きは簡単、味わえる特別感
スマホで書類を申請し、郵送されてきた書類を持って役場に行くだけなので、手続き自体は比較的簡単である。また、不在者投票だと受付窓口も普通の投票と異なるので、特別感も味わえるだろう。
前提として、引っ越す際には住民票を移すことが必要であるという理解をしたうえで、不在者投票制度はより多くの有権者に広まってほしい制度だ。自らが持つ「1票」を諦めず、各々が主体的に行動した先に、真の民主主義が訪れるのだ。
参考データ
・総務省 https://www.soumu.go.jp/main_content/001022236.xlsx
・公益財団法人明るい選挙推進協会 https://www.akaruisenkyo.or.jp/wp/wp-content/uploads/2011/01/%E7%AC%AC25%E5%9B%9E%E5%8F%82%E9%99%A2%E9%81%B8%E5%8D%98%E7%B4%94%E9%9B%86%E8%A8%88.pdf
(横山葵)