インタビューに応じる広河氏
インタビューに応じる広河氏
 12月6日、塾生の団体S.A.L.が主催した報道写真展で、展示写真の解説を行う一人の男性の姿があった。同イベントに協力した報道写真誌「DAYS JAPAN」の編集長、広河隆一さんである。

 広河さんは1943年生まれ。イスラエルでの生活の後、フォトジャーナリストとして、パレスチナ問題やチェルノブイリ原発事故
の取材など多方面で精力的な活動を行ってきた。昨年より、長年の取材映像を編集したドキュメンタリー映画「パレスチナ948 NAKBA」が全国で公開されている。

 「自分の論文やゼミでの活動等の協力要請は全てお断り」という広河さんがS.A.L.からの提携申し入れを受けた理由、それは同団体の理念にあった。 S.A.L.は昨年発足した国際支援・問題啓発団体。報道写真展の開催のほか、フェアトレード商品の販売や、勉強会、イスラエル訪問などの活動を行っている。自らの活動を単なる自己満足に終わらせず、「知って、伝えて、献するスタンス」に、広河さんの心の「火がついた」という。

 「彼らのアンテナの広げ方は、DAYS JAPANと重なる」 日本の報道の現状に対する、広河さんの指摘は厳しい。「我々は何を知らなければならないのか。知らなければ、今この世の中で何に対応できないのか。そのような問題を、きちんと出すようなメディアがなくなっている」

 メディア関係の職を目指す学生は多いが「実際は、ただ○○新聞の社員になりたいだけというのがほとんど。ジャーナリストとは違う」と、広河さんは一刀両断。少なくない「ジャーナリスト」志望者には、耳の痛い一言だろう。

 広河さんはこれまで、米軍による攻撃後のアフガニスタンの状況など、日本の大手メディアがあまり正面から報道してこなかった事柄も、積極的に伝えようとしてきた。

 「自分たちの国が支持した戦いで、誤爆といった間違いが起こってしまったかどうか、調査がされなければならない。国がその義務を果たさなければ、ジャーナリストがやらねばならない」

 広河さんとS.A.L.の協力関係は今後も続く予定だ。今年の秋に「DAYS JAPAN フォトジャーナリズム・フェスティバル」を横浜の赤レンガ倉庫で共に行う企画などが、現在進行中である。

 「ジャーナリストには志がなければならない。守るべきものがなければならない」と語る広河さんに、行動力あふれるS.A.L.のメンバー。彼らに共通して感じられるのは、自らが伝えたいことへの「強いこだわり」だ。情報を発信していく者に求められるのは、彼らのような能動的な姿勢なのだろう。

(花田亮輔)