2025年10月19日。日吉キャンパスの日吉記念館には、朝早くから多くの塾員とその家族が集まった。年に一度、全国の慶應義塾出身者が集う「慶應連合三田会大会」が、今年も盛大に幕を開けた。会場には卒業生だけでなく、在学生や地域の方々が一堂に会して、まさに「慶應コミュニティの現在」を体現するような光景が広がっていた。
開会式の司会を務めたのは、2009年法学部政治学科卒業の石井智宏氏と、1995年文学部卒業の小川知子氏。両氏ともに穏やかな笑顔で登壇し、久しぶりに再会した塾員たちをあたたかく迎えた。石井氏は冒頭、「日吉町会や日吉商店街の皆さまにもお越しいただきました」と地域との関わりに触れ、慶應が築いてきた開かれた学び舎としての伝統を思い起こさせた。小川氏は「本日は心を込めて進行させていただきます」と語り、式全体を柔らかな雰囲気で包み込んだ。
今年の大会スローガンは「集え三色旗のもとに」。この言葉には、単なる同窓の集いを超え、塾員一人ひとりの中にある慶應の精神を再び呼び覚まそうという思いが込められている。小川氏はその趣旨を紹介し、「世代やキャンパスの垣根を越え、塾で学んだ者たちが誇りと絆を胸に、再び集い語り合う日となることを願っています」と述べた。会場にはうなずく参加者の姿も多く、スローガンが持つメッセージが静かに共有されていった。
続いて登壇したのは、2025年慶應連合三田会大会実行委員長の市瀬豊和氏(1985年法学部卒)。市瀬氏は、まず多忙な中会場に足を運んだ全ての参加者に感謝を述べ、「連合三田会大会が、慶應義塾の精神と伝統を次世代につなぐ節目の場であることを改めて感じてほしい」と語った。さらに、卒業50周年を迎える塾員への祝意も添えながら、「この大会を通じて、世代間のつながりをさらに強くし、慶應の絆を社会へと広げていきたい」と力強く呼びかけた。
その言葉を受けて、会場からは大きな拍手が送られた。久々に再会する旧友や恩師を見つけ、笑顔で握手を交わす姿も多く見られる。かつて同じ講義室で学び、同じ三色旗を見上げた仲間たちが、今はそれぞれの分野で活躍しながら再び同じ場所に集っている。その光景は、慶應が大切にしてきた「生涯にわたる学びとつながり」の象徴そのものだった。
近年、デジタル化が進む中で、人と人との直接的なつながりが希薄になりがちな時代において、顔を合わせて語り合う機会の価値は一層高まっている。慶應連合三田会大会は、単なる同窓の集いではなく、塾員が互いに刺激を与え合い、新たな協働や挑戦を生み出す場としても重要な役割を果たしている。今年の開会式でも、その原点ともいえる「つながりの力」が随所に感じられた。