シスターフッドとは何か。

調べてみれば、「女性同士の連携」や「絆」と表現されている。では、なぜ改めて「女性同士の連携」が「シスターフッド」という言葉として、ジャンルとしてこの社会に存在するようになったのか。

本企画では3回にわたってシスターフッドを読み解いていく。

最終回となる今回は「選ぶ」視点から。京都府にあるシスターフッド書店kaninの店主お2人に話を聞いた。

 

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シスターフッド書店kanin様

京都府左京区にある「シスターフッド書店Kanin」。二人の店主は小学生からの幼馴染だ。社会人生活を経て、念願の書店を開いた。自身の人生経験もあり女性の人権問題に関心があったことに加え、お客さんから覚えてもらいやすそうという気持ちも込めて、シスターフッド書店と名付けた。ずっとなんとなく仲が良かった、そんな自身たちの関係もシスターフッドの関係の一つだと話す。

この書店には、ふらっときても周りを気にすることなく、お酒やコーヒーを飲みながら本が飲める、そういう安心できる場所にしたいという願いが込められている。

「私たちとの出会いもそうだし、お客さん同士とかがつながって、ちょっとでも心を強く持てるような場所になればいいなと思っているのはあります」

 

近年、シスターフッド作品が台頭してきた理由について二人は、「正解はない」とした上でこう話した。

「結婚をして妻になる。子を産んで母になる。そうすると、昔はすごくつながっていた友だちも徐々に輪から抜けちゃうんですよ。でも、なんか現代はそういうのじゃなくてもいいんじゃないかって皆が気付き始めたから、わって盛り上がってきたんじゃないかな」

 

選書は自分たちがかつて感銘を受けた作品を中心に、インターネットや新聞の書評欄からも情報収集を行う。ただし、シスターフッドに縛った品揃えではなく、柔軟に自分の好きな本を置いている、と笑顔を見せた。

シスターフッドが主題ではない作品でも、読めばシスターフッドを感じる作品があるという。

「たとえば、『赤毛のアン』って、一般的にはギルバートと幸せに暮らしました、で終わっているけど、実際は幼少期からの親友のダイアナとの絆は消えないまま、大人になってからも二人はよく会ってお互いに影響を及ぼし合っている。他にも、マリラ(アンの義母)とリンド夫人は、リンド夫人の夫の死後一緒に暮らしている。そういうのも、シスターフッドの一つの形ですよね」

ほか、初心者でも手を取りやすい作品として挙げられたのは金井美恵子氏の『小春日和:インディアン・サマー』(河出書房新社)。主人公・桃子と親友・花子の大学生から40歳をすぎるまでを描いたこの作品について二人は、「べったりではないけどゆるくずっと仲良しで繋がっているっていうのもシスターフッドだと思う」との見解を示した。

また、ダニエル・クロウズ氏の漫画、『ゴーストワールド』は閉塞感のある街で暮らす親友同士の少女たちの物語だ。外の世界に出ていくかこのまま街にとどまるか、二人の葛藤をありのまま描いた作品だ。

中西豊子氏の『女の本屋の物語』(ドメス出版)は二人が書店を開くきっかけとなった一冊。シスターフッドやフェミニズムに触れたことがない人に是非読んでみてほしいと話す。

 

「女性同士の共闘」と表現されることもあるシスターフッド。二人も「これまでの人生で、いつも自分を引き上げてくれるのは女性だった」という。しかし、共闘の先にあるのは異性ではなく社会のシステムだと話す。

「シスターフッドやフェミニズムは、女性のためだけのものではなく、皆のためにあるものなんですよね。社会のシステムは世の中の一部の人のために作られているから、それによってしんどい男の人もたくさんいると思う。シスターフッドが向かう先はそういった社会に疑問を投げかけること。フェミニズム=人権なんだと思います」

 

シスターフッドという形で女性同士が繋いだ手がだんだんと広がって、いつか皆で大きな握手ができたら。そんな日を自分たちの手で掴むための、「共闘」だ。

 

小島毬

 

シスターフッド書店kanin

京都府京都市左京区北白川堂ノ前町1デュー・北白川105

立て看板が目印

 

店内の様子