3月20日、慶大日吉キャンパスの来往舎前で、「シドモア桜」の植樹式があった。式には、「シドモア桜の会横浜」代表理事の梅本千晶氏や、理事の石井真紀子氏、日吉キャンパス理事長の國分紀嗣氏などが参加し、植樹を祝った。生物学的にはソメイヨシノにあたるこの花だが、塾生に送るメッセージは大変意味深い。

3月20日、来往舎前で植樹式が行われた

シドモア桜の歴史は1912年、横浜市から米国へ苗木が贈与したことから始まる。この贈与を努めたのが、当時の女性としては珍しく外交活動を行い、日米の架け橋となったエリザ・シドモア氏だ。贈与した桜は、日米友好のシンボルでもある米ワシントンのイベント「全米桜祭り」の先駆けとなった。ワシントンから送られた「里帰り桜」から穂木を取った苗を「シドモア桜」と指す。1912年米国に送られた桜の「孫」にあたるわけだ。

今回の植樹は、シドモア氏の活動や精神を後世に伝える「シドモア桜の会横浜」の活動の一環。植樹の経緯について、シドモア氏と関係の深い横浜市を代表する大学として、日吉キャンパスが選ばれた。会の役員に慶應関係者が多いことも後押ししたと代表理事の梅本氏はいう。

桜は来往舎前に設置され、メディア側から福澤像が見守る構図だ。桜には、チャレンジ精神をもって色々なことの架け橋となってほしいというメッセージが込められている。また、女性進出に関するメッセージも伝えたいと理事の石井氏は語る。

日本を愛し、日米友好のシンボルとして挙げられるシドモア氏だが、墓前に訪れる人影も最近は少なくなっているという。そんな中、新しい世代に「希望を持って未来を考えることの大切さ」を受け継ぎたいと梅本氏は強調した。

 

(朴太暎)