目まぐるしいスピードで展開する試合や、リンクに響き渡るほどの音でぶつかり合う選手の姿から、「氷上の格闘技」とも称されるアイスホッケー。そのような激しい試合を、強いフィジカルと堅実な戦略で戦い抜く慶大スケート部ホッケー部門は、今年創部100年を迎える。
主将・田原輝志さん(経4)、副将・赤坂泰成さん(政4)、マネージャー・交野響さん(商3)へのインタビューを通し、歴史的年へのスタートを切った部の今後に迫る。

 

スケート部ホッケー部門の集合写真

「新たなスタートを切る1年目に」

――さっそくですが、創部100周年に向けての抱負をお聞かせください。
田原:100周年という歴史に責任の大きさを感じながらも力みすぎずに、やるべきことをひとつずつ達成できたらと思います。OBの方などからのサポートに見合うような結果を残せるように、自分を中心としてチームで進んでいきたいですね。

赤坂:次の100年へと受け継いでいく年にしたいなと思います。ただ、自分たちとしては「何を残すか」よりも「何を変えるか」の方に着眼していて、チームの足りない部分や時代錯誤の部分などをうまく変えながら、結果を出していきたいです。100年目というより、新たなスタートをきる1年目にしたいですね。

 

――今年のスローガンは”Change as one”ですが、これに定めた理由は何でしょうか。

赤坂:このスローガンには、自分たちが大きく変わっていかなければならないという気持ちが込められています。昨年度は秋のリーグ戦で、ディビジョン1グループ AからグループBへと降格してしまいました。また、自主練時間の低下など、アイスホッケーへの選手の熱量も低下していたのではないかと思っています。なので、個人としてだけでなく、チームとしても変わっていきたいと考えました。

 

――昨年度のスローガンである“All Out”はどれほど達成できましたか。
田原:100%出し切る、という目標を完全には達成できなかったと感じています。結果ももちろん、毎回の練習に向上心を持って本気でぶつかれているかと聞かれると、疑問が残ります。もっともっと上を目指せるチームだと思っているので。

 

――スローガンはどのように決めているのですか。
赤原:基本的には4年生が中心となり決定しています。ただ、下級生が上級生からの指示を待つだけで主体性が低いという問題意識から、今年はチームが目指すべき姿についての意見を下級生から聞き、4年で集約する形にしました。今一度、一人一人がチームについて考えられたのではないかと思います。

 

「一から全て見直していく」

部は、6月17日には春季早慶定期戦 (以下、早慶戦)、秋にはリーグ戦が控える。どちらも文字通り、負けられない戦いとなる。

2022年5月の第67回早慶アイスホッケー春季定期戦試合中

――部にとって、早慶戦とはどのような意味を持つのでしょうか。
赤坂:自分たちの存在意義と言っても良い試合です。この試合だけは、慶應と早稲田のチームでないといけない。他に替えが効かないので。

田原:絶対に負けたくない試合です。4年ある中で1回は絶対に勝ちたいですし、みんなで喜びを分かち合いたいと強く思います。

 

――早慶戦に向けて、どのような練習を行うのでしょうか。
田原:早稲田の特徴やプレースタイルを研究し、弱点を突いたり、長所を潰したりできるような試合展開を考えます。慶大は個人のスキルでは劣る部分もあるので、戦術やチーム内の意識統一で補っている感じです。

赤坂:相手チームに退場選手が出て人数的に有利になると、各チームの戦術が出やすくなるので、その場面への対応も練習します。練習前に早稲田の動画を繰り返し見て、それを意識して氷上練習をするなどしています。

 

――激しい試合展開の中でも、頭を多く使っているのですね…。
田原:そうですね、頭を使ってプレーするのは慶應の選手の特徴の一つでもあるかなと思います。

 

――早慶戦への意気込みを聞かせていただけますか。
赤坂:ここ5年勝てていないので、絶対に勝ちたいです。もう少しのところで負けるだとか、僕自身は試合中に怪我をして悔しい思いをすることもあったので、その雪辱を晴らしたいです。悔しさを全部ぶつけて、圧勝したいです。

田原:内容もそうですが、とにかく勝敗にこだわりたいといです。大学入ってから3年間、ずっと悔しい思いをしてきていたので絶対に勝ちたい。

部が早慶戦と同じほど重要視するのは、秋に行われる「関東大学アイスホッケーリーグ戦」でのディビジョン1グループAへの昇格だ。リーグ戦の中で1位から8位までがグループA、9位から11位までがBとなる。例年、慶大はグループA残留を果たしていたが、昨年度はBへと降格した。

 

――グループAとBはどのように違うのですか。
赤坂:集まっている選手が違いますね。Aでは、高校時代に日本代表に選ばれていたような強い選手がいますが、Bではそのような選手は多くはないです。それに、自分たちのモチベーションも大きく違ってきます。一種のステータスではないですけど、重要な地位だったと思います。

 

――Aリーグに上がる目標を達成するために、昨年度から変えた点などありますか。
田原:基礎をまずは固めるようにしています。日々のトレーニング内容の強度を上げて、フィジカルもメンタルも一人一人が変えていけるようにしています。基礎が疎かでは勝てるわけがないので、まずは一から全て見直していくのが大事だと考えています。

 

部内連携が生み出す強さ

――慶大アイスホッケーの強みはどこにあるのでしょうか。
田原:選手のバックグラウンドが違うのが面白いなと思っています。慶大はスポーツ推薦がないので、小さい頃からずっとアイスホッケーをやってきたという選手だけではないです。ただ、だからこそ勉強も両立させながら、自分たちの力がどれほど通用するか試していくのが面白いですね。絶対に負けたくないっていう意識でやれています。

赤坂:連携や競技に向き合う姿勢は他大学と比べても引けを取らないと思います。スポーツ推薦がないことで、技術で劣っているところはあると思います。ただ、走る力や体の強さ、戦術など、時間をかければ成果が出る点にしっかりと向き合っています。そこが、部の強みだと思います。

 

――連携との言葉が出ましたが、チーム内ではどのように選手間の連携をとっているのですか。
田原:縦割り班を作っていて、そこでのトレーニングや食事を通して連携をとることが多いですかね。良いのか悪いのかはわかりませんが、今年のチームはどの学年でも仲が良いと思います。

赤坂:結構フラットな関係を作れていると思います。他の体育会と比べると、4年生が1番強くて、1年が弱いという傾向が薄いと思うので、後輩からも積極的に声掛けしてもらったりしています。下級生でもすごいキャリアを積んできた選手がいるので、たくさん刺激を受けますね。

練習中の様子

――アイスホッケーの魅力や面白さはどこにありますか。
田原:僕は2つあるかなと思っています。1つ目はスピード感。氷上を滑るスピードもそうですが、シュートのスピードは他競技にはない魅力だと思います。2つ目は、迫力です。この競技、相手に思いっきりぶつかるのが許されているので、その衝撃は他にないと思います。

赤坂:殴り合いとまではいかないですが、互いにぶつかり合って熱くなる部分もありつつ、物事をしっかり考えてプレーする冷静な部分も持ち合わせているのが面白いと思いますね。2つのバランスが必要な競技だと思います。

交野:私は人数不利ができるのが面白いなと思います。ペナルティーを犯すと一定時間その選手はプレーできなくなるので、人数が少ないままプレーをしなくてはいけないんです。アイスホッケーのように、人数不利が頻繁に起こる競技は他にないと思います。試合観戦の時も人数に注目して、どちらが有利でどちらが不利かを見るのも楽しいと思います。

 

――最後に、読者へのメッセージをお願いします。
田原:アイスホッケーは、早慶戦を見て貰えば絶対にハマるスポーツです!なので、盛り上がりを見に、一度足を運んでほしいです。

交野:今年は創部100周年ということもあり、早慶戦でも様々な企画を用意しています。入場の照明や、氷上へのプロジェクションマッピングなど来場していただいた方に楽しんでもらえるような企画を準備しているので、開会式からたくさんの方に来てほしいです!来られない方も、配信サイト「SPORTS BULL」での配信も行う予定ですので、ぜひ見てください。

 

(藪優果)