アニメ業界の最先端へ MAPPA代表取締役大塚学氏インタビュー

ビジネスとしての確立

コロナ禍という状況も影響してか、近年は稀に見るアニメブームが巻き起こっている。作品の内容のみならず、手掛けた企業に注目が及びつつある現状。大塚氏はプレッシャーを感じる一方で、「総じてとても良いことだと思っています」とも語る。「世間から注目される、注目されるからこそいろいろなビジネスチャンスが生まれる。こうした現状に打ち勝てば、また打ち勝つ企業が増えれば、良い業界になっていくと思います」

こう話す背景には、アニメ業界内部に未だ残る課題の山がある。大塚氏はまず業界内における大企業の少なさを指摘する。「中小企業が何百社もあり、各々が作品を制作しているため、無計画に作品の数が増える。その結果コントロールを失った作品が生まれてしまっているのが現状です」そのうえでこう話す、「一社として安定して本数を制作し、お客さんの需要に応えていく。この実現のため大企業というものを目指しています」

加えてこうした根本の問題解決には、利益をあげる会社組織が不可欠だという。「これまでのアニメ会社のほとんどが製作費を受け取って作品を作り、その製作費で多くて数千万の利益を獲得して終わっていました」しかしながら、現状アニメの市場規模は年間2兆円を超える。「どこかで大きなビジネスに発展している以上、お金を稼ぐノウハウや経験を重ね、自社の力で利益をきちんと自分たちのものにすることが重要です」

切り拓く鍵は『人』

こうしたなかで2018年、MAPPAは業界として初めて仙台に地方スタジオを設立した。小さなコミュニティの中で人材を奪い合う、東京の現状に限界を感じていたという。「東京じゃなくてもアニメを作ることが出来る、作ることが出来る集団がいるということは凄く大きいです。さまざまな事情から絵で生きていくことを諦めてしまっていた人たちの受け皿に、一定数なっているのではないでしょうか」

良い作品、高いクオリティの作品を作るにはが必要だと大塚氏は改めて強調する。「人が必要なのに育てないのは矛盾していますし、良い人材を育てられる環境やノウハウをもっている企業はどの業種でも強いです」企業として成長するにあたりこうした育成は不可欠なものであるとする一方、こうも語る。「自分がアニメの世界に入ったときはブラックなんて言葉はなかった。苦しい思いをしたなかで、若者がこのような思いをせずともアニメを作ることのできる環境を目指しています」

人と同じことをまねしてもヒットはない

今後は、自分たちが中心となってお客さんに作品を届けたいと話す大塚氏。作品の商品化、イベントや催事というライツ事業(制作したコンテンツの版権販売、二次展開を行うビジネス)の拡充によって、ようやく作品制作をビジネスにつなげるというサイクルが軌道に乗り始めているところだ。「当面の目標は良い作品を作り、それを自分たちの手で良い形でお客さんに届けて、しっかりと利益を出すことです。こうしたことをより充実しておこなっていきたいと思います」

その作品作りについても、秘めた決意を覗かせる。「世の中、話題や流行といったところに時代の流れのようなものがある。常にその流れの先を行くような形で作品作りをしていきたいです」さらに大塚氏はこう語る。「人と同じことをしても、そこにヒットはない。次の時代、来年再来年、さらにその先にどういう作品がお客さんに受け入れられるのか。試行錯誤しながら作品を作っていきたいと思います」

未来の後進たちにも思いをはせる。「様々な業種で世の中に向けて自らの手で何かを届け、ビジネスをしていくことは可能性に満ちていると思います。それはアニメ業界でも一緒なので、元気な若者たちにはぜひこの業界で暴れてほしいなって思います」

 

繰り返し紡がれた「お客さんに届ける」という言葉。そして穏やかに話す中に垣間見える、熱い遊び心が印象的であった。時代の最先端を走り続ける彼らは、これからどんな世界を見せてくれるのだろうか。

 

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〇本記事にて紹介した作品

『劇場版 呪術廻戦 0』公式サイトはこちら

第2期2023年放送決定!TVアニメ「呪術廻戦」公式サイトはこちら

TVアニメ「BANANA FISH」公式サイトはこちら

 

(松岡優月)