人肌恋しい季節になってきましたが、「おひとりさま」でも楽しむことはできますか。
(環3女)
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「お前なら楽勝だろう」と、所長から今回白羽の矢を立てられたのは所員A(文2女)。この女、ラーメン店、牛丼店、日頃からどこにでも猫背でひょこひょこ1人で出向いては満喫している。もちろんAは、ハードルが低い場所を既に制覇済み。そこで、ひそかに「おひとりさま」に憧れを抱いていた友人に協力を要請した。
M(文2女)は、「おひとりさま」初体験。カラオケに挑戦することにしたが、初めに訪れた店には小さく注意書きがあった。「お2人様以上」。気を取り直して2店目へ。同じく「お2人様以上」。
やや気分を害しながら三店目へ向かう。ここは「お1人様」でも受け入れてくれるらしい。動揺を隠しながらマイクを受け取り、部屋へ向かう。
人前では歌えない洋楽を次々熱唱。なりきりQU○EN!気分は最高潮!しかし、曲の合間が無駄にむなしい。1時間で退出することにした。
帰り道、自転車をこぎながら鼻歌を歌い、「やっぱりこれが一番だな」。
続いても、普段は「おひとりさま」など考えもしないK(文2女)。渋谷の某スイーツ食べ放題店を訪れる。「いらっしゃいませ。お客様は……1名様……ですか」。首をただ縦に振った。
カップルや女性グループで賑わう店内に案内される。「お客様入りまーす」という店員の声でKに注目が集まる。
周囲の視線を振り切るようにケーキを食べつつアンケートに答える。「ご同伴者」の選択肢に当てはまるものがなかったので、「1人で来ました」と脇に書いた。
長すぎる90分間、奇異の視線を浴びてKはもうお腹いっぱいだった。
「ひとりで肉くらい焼けにゃ、女がすたる」――。焼肉という難題を課されたE(文2女)は、某焼肉チェーン店に足を踏み入れた。
店内は家族連れや団体客ばかり。一気に心が折れるE。K同様、店員の「1名様ご案内しまぁす」の声が更に追い打ちをかける。
席に案内され、カルビとロース、タン塩を注文。あまりの孤独感から涙がこぼれそうになるが、とりあえず数枚焼いてみる。ふむ、非常にジューシーだ。次第に、他の人に肉を奪われる心配をしなくていいという事実に気づき、夢中で頬張り始めた。
すっかり満腹になったE。「おひとりさまだろうが何だろうが、肉はやはり、うまい」
クイーン・オブ・おひとりさまを目指すA。今回は、本紙もお世話になっている田町ハイレーンに行くことにした。
プレーヤー名は、「1人のひとちゃん」。これには受付のお兄さんも苦笑い。
学生や家族連れ、年配の方々で賑わう中、ボーリングをスタートする。
1人で投げる、倒すの繰り返し。クールを装いながらも、確実に気分は盛り上がってくる。 しかし、ストライクを出しても一緒にハイタッチしてくれる仲間がいない寂しさが徐々に募る。仕方なく1人で万歳をしていると、振り向いた先には、受付のおじさんの微笑みが。記念に様子をカメラに収めてもらった=写真。
あまりに熱中して5ゲームを終える。テンションが上がりきらず、自己ベストを出せなかったAは、「1人でボーリングもなかなか悪くない」と負け惜しみを言い残して帰路についた。
その頃、女性に弱いS(文2男)はとぼとぼ歩いていた。「私、閉所恐怖症だから一人で観覧車に乗れないんだ。代りに行ってきて」とAに言われ、断れなかったらしい。
「あいつ、覚えてろよ」と向かったのは○ク―ア。ほとんどはカップルでの来場のため、アウェーである。
係のお姉さんに「おひとりでよろしいですか?」と元気に聞かれた。「あ、は、はい」。声が上ずる。
かなりロマンチックな夜景を更に楽しもうと、エア彼女に話しかけてみる、「きれいだね」。15分間、密室空間には手に汗が出るほどの緊張とわびしさが漂っていた。
地上に戻った瞬間の達成感と解放感に味をしめてしまったSは、その後、絶叫マシーン、サンダ―ドルフィンにも乗った。勿論、1人で。
(1人のひとちゃん)