国際化が謳われている昨今、海外留学を考えている人も多いのではないか。だが、初めて海外留学をするとなると語学力、現地での生活、文化の違いなどの不安が多く、なかなか実行に移せない人も多いことだろう。そこで、今回は慶應義塾大学独自の短期留学プログラムに注目した。
国際センターが主催する「在外研修プログラム」(短期の海外研修)。留学というと半年から1年以上海外で勉強することを想定するが、この在外研修は夏休みや春休みに2週間から4週間、現地大学に滞在し、集団で英語によるプログラムを受けるというものだ。そのため、現地でカルチャーショックなどに襲われた時でも日本人同士で助け合うこともできる。
また、学部ごとの独自の短期プログラムを利用することも可能だ。例えば理工学部は、約3週間ドイツのアーヘン工科大学でドイツ語・ドイツ文化研修、英語によるエンジニアリング入門講座を受講できる夏期講座を開催している。
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こうした短期の海外研修に応募するにあたっても、やはり一番の心配事は自分の語学力だろう。この疑問に日吉学生部国際担当係主任の鈴木民香さんは次のように語る。
「交換留学出願とは違い、語学スコアの最低基準は明示していませんが、確かに、ある程度語学力がないと現地で自分が困ることになります」
国際センター主催の在外研修では、選考は本人の学習計画も含め、総合的に判断される。
「あくまでプログラムの目的は語学力の向上ではなく、授業を受けたり、現地学生との交流や討論にチャレンジしたりすることにあります」
つまり、留学と同様の環境下での学習が短期海外研修の主な意義である。
鈴木さんは短期海外研修を『留学のきっかけになる第一歩』と称する。実際研修に応募した学生の内1割程度は、その後交換留学に応募しているという。
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10月1日に国際センター所長に就任したコリン・マッケンジー経済学部教授は、1982年にオーストラリアの国費留学生として大阪外国語大学で6カ月学び、その後京都大学に所属。経済企画庁主催のプログラムに18カ月参加して、日本経済を学んだ。
マッケンジー教授は自身の日本への留学経験を「私は正直な話、当時日本には全然興味がありませんでした。ひょんなことから日本へ留学することになり、来日した時に、『ほかの留学生より日本語を上手くなってやろう』という目標を立てましたが、日本語が上達した後のことを具体的には考えていませんでした」と語る。
「目的がなかったので、学術的な面において成果が上げられず、良い留学だったとは言えないと思います。しかし、留学があったからこそ日本で教えてみたいと思うようになりました。そういった意味で、私の人生において、留学は成功したと思っています」
留学にするにあたって大切なものは何なのか。自身の留学体験を回顧し、マッケンジー教授は「留学で大切なのは、やはり目的意識」だと話す。
「そこで何をしたいのか、何のために海外で勉強するのか、その目的を自分で設定することが必要です」
また、留学には事前準備も欠かしてはならないと言う。準備不足だと、現地に着いてから基本的な生活情報を含めてイチから調べることになり、限られた時間が無駄になるからだ。そのため、交換留学の面接時には現地で勉強したい事と、現地の情報をきちんと調べているかを必ず質問している。
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短期海外研修は長期留学への目標を見つけたり、学生生活の視野を広げたりするきっかけ作りとして有効である。
将来、1年以上の留学を考えている学生も、まずは短期の海外研修を試してみてはどうだろうか。
(田村優歩)