《本屋の行方》古本遊戯 流浪堂 来てくれる人に対して何ができるか

本屋の行方

思わず手に取りたくなるように、本が陳列された店内

雰囲気の良い喫茶店やハイセンスな古着屋が立ち並ぶおしゃれな街として知られている東急東横線・学芸大学駅。線路沿いを歩くと見える人気の洋菓子店を右に曲がると、店頭に雑誌がぎっしりと並べられた店が見える。「古本遊戯 流浪堂」と書かれたドアを開くと、視界いっぱいに本で埋めつくされた景色が広がる。

「開店当初、街は今みたいにおしゃれではなかったし、この店も今ほど本はなかった。赤子のような状態だったね」

「古本遊戯 流浪堂」店主の二見彰さん(50)

店主の二見彰さん(50)は、懐かしそうに開店した2000年当時を振り返る。20代半ばまでバンドマンとして音楽漬けの生活を送り、本はあまり読んでこなかったという二見さん。古書店の世界へ足を踏み入れたのは所属バンドの解散直後のことだ。音楽活動を諦めたわけではなく、当面のお金を工面するための短いアルバイトのつもりだったという。

小説や専門書からCDまで、幅広い年代・商品を取り扱う古書店の懐の深さに魅力を感じた。アルバイト店員として働いている間に自分でも店を持ちたくなり、地元である学芸大学に店舗を構えることに決めた。

「最初からコンセプトや方針を固めすぎると、上手くいかなかった時に自暴自棄になってしまうと思ったから、あえて持たなかった。『古本遊戯』という店名も『流浪堂』だけでは何の店かわからないからつけただけで、そろそろ外してもいいかな」と笑みを交えながら話す。

開店から18年経った現在でもこれといったコンセプトを持っていないが、どうしたら若い人に本を手に取ってもらえるかは常に考えているという。本を買うだけでなく見ることも楽しめる店にしたいと思い、5年ほど前から店内奥に位置する小部屋をギャラリーとして、作家の展示を開催するようになった。

60年代や70年代の本は表紙のイラストやフォントの点で、最近の本の装丁にはない独特の魅力がある。店内の本棚を見渡すと、表紙が見えるように棚に並べられている本も多い。並べられる本の数が減って効率は悪くなるが、思わず手に取りたくなるような陳列だ。

「個人営業の店でできることは限られている。ならば来てくれる人に対して何ができるかを考えたい」。ギャラリーでの展示の告知以外、インターネットで情報発信をしていないのもそのためだ。

デジタルネイティブと呼ばれる現在の子どもたちは、もはやスマートフォンを特別なものとは考えていない。一瞬で情報にアクセスできるのが当たり前になっているからこそ、店に足を運んで本を選び、ページをめくるのが楽しくなる。「アナログな嗜好品として本が楽しまれる時代が来るまで、紙の本を生き残らせることが今の書店の使命」と二見さんは告げる。

出版不況が叫ばれて久しい現在でも、未来に一筋の光はさしている。

(川上ゆきの)

古本遊戯 流浪堂

東京都目黒区鷹番3-6-9-103(最寄駅:東急東横線 学芸大学駅)

営業時間:平日 12:00~23:00 日・祝 12:00~22:00 定休日:木曜日