『自立から勝利へ』のスタート~一人一人が支えあうこととは~

2009年度初のKEIO SPORTS TIMESの記事である。私自身、体育会の取材を行って今年で4年目、今年は集大成の年だ。4年間続けてきて強く思うようになったことは、『もっと多くの人に学生スポーツの魅力を知ってもらいたい』ということだ。このKEIO SPORTS TIMESが、学生スポーツを魅力的だと感じ、一人でも多くの人が会場に足を運ぶきっかけとなれば幸いである。

インカレ2連覇への試金石
優勝の瞬間、喜びを分かち合う♯4田上と♯5小林
優勝の瞬間、喜びを分かち合う♯4田上と♯5小林

5月31日代々木第二体育館で優勝トロフィーを手にしたのは、慶應バスケットボール部だった。5月の最終週を中心に行われた第58回関東大学バスケットボール選手権(以下、トーナメント)で、慶大は40年ぶり5回目の優勝を手にした。
慶大は、横浜武道大、早稲田大、中央大と戦い、準決勝では昨年のトーナメントで惜しくも敗れた法政大と戦うこととなった。
そして、決勝では3年前のインカレで優勝をかけて戦った東海大との一戦であった。このトーナメントを通してチームが体現したこと、それは一人一人が「自立すること」、その結果としてチームを「支えあうこと」なのではないか。
「人がダメなら自分が助けてあげよう、自分がそいつの分まで頑張ってやろうっていう気持がチーム全体に浸透してきている。そういう人たちが多くいて、試合に臨むことで、いい結果が得られるということが分かったので、そういったところが一番の収穫かなと思います」(♯4田上・4年・筑紫丘、トーナメント後のコメント)

連携の不足―早大戦・中大戦
「スタータ5人の意思疎通」を今後の課題に挙げた、♯16二ノ宮
「スタータ5人の意思疎通」を今後の課題に挙げた、♯16二ノ宮

早大戦では30点差で勝利することを目標としていたが、24点差と目標に届かなかった(89-65)。
その原因として佐々木ヘッドコーチ(HC)は「連携が足りない」と指摘した。
主将の♯4田上も「この頃、うちの速攻というチームプレーがあまりできていなんです・・・トーナメント中に5人で合わせようという意識で臨んでいます」と語った。
実際、日韓戦に出場していた♯7岩下、♯14酒井(3年・福岡大附大濠)と怪我に悩まされた♯16二ノ宮(3年・京北)の不在でチーム練習が十分にできていなかったのは事実である。
さらに、中大戦では、序盤に8点のリード許すといった入りに課題が残る試合展開であった。
この原因の一つに佐々木HCはチームで支え合いができていないことと指摘した。
「ちょっと田上がおもいね。責任感が強い子だから、ちょっとつまずくとハツラツさというか、シュートも決まんないかな。頑張らなきゃという思いと、体のバランスがきちっとできていないので、去年みたいに、力ぬけて、鈴木(前主将)を助けなきゃという思いがあると、すっと集中できていたんだけど……。『他の人がサポートしなさい。去年の鈴木のように』と今ミーティングで言ってきた。そうすれば、力を出し始めたらチームがもっと強くなる。今あそこで10点損してるからね・・・やっぱりキャプテンを支えること、やれなかったとしても俺がやってやるよっていう気持ちが大事。それが、まだできてない」

チーム力の目覚め―準決勝
♯4田上、動きに軽やかさが見られるようになった
♯4田上、動きに軽やかさが見られるようになった

準決勝は、昨年の同大会の準決勝で惜しくも敗れた法政大と。
♯5小林(4年・福岡大附大濠)の3Pや♯14酒井、♯7岩下(3年・芝)のオフェンスリバウンドからの得点、♯16二ノ宮のアシストで前半、一気に21点差を広げた。
中大戦での入りの悪さという課題はクリアしたものの、この日は3Qで流れを継続できなかったという課題が残った。
結果は、19点差をつけて勝利した(80-61)。
「昨日までは緊張してしまっていて、でも今日は周りの選手がフォローしてくれて、自分の感覚を取り戻すことができたので、今日は入りから自信を持って、自分のプレイが出来たという感じです」(♯4田上)
この試合では、♯4田上は3Pを決めるというような、積極的なプレイが見られるようになり、徐々に硬さがなくなってきているように感じた。
周りの支えを実感しているのは♯4田上だけではなく、「僕個人としては仕事をしたという記憶がないので、酒井とか周りの人に助けられたかなというのはあります」と中大戦後に語った♯7岩下もだ。
そう語る♯7岩下であるが、決勝戦ではダンクやブロックなど、ここぞという時にファインプレイを決め、チームを勝利へと導いた。
この試合は、まさに一人一人が自分の役割を自覚し、「優勝」への大事なステップだったのではないだろうか。

自立、そして優勝へ
積極的なプレイを見せた♯20家治
積極的なプレイを見せた♯20家治

そして、東海大との決勝戦。
この試合も一人一人から自立を感じさせる場面がいくつかあった。特に、ここで決められると同点といった東海大のラストプレイ、♯17前村のレイアップをバックボードに当たる寸前で岩下がブロック。95-93で2点差をつけて、優勝を手にした。
トーナメントでの収穫として♯16二ノ宮は「バックアップのメンバーが流れを切らずに力を入れてくれたこと」と挙げた。中大戦では、♯12金岡(3年・正智深谷)の2連続スティールや♯20家治(2年・清風南海)の速攻からのバスカンといった積極的なプレイが見られた。

一人一人が自らの役割を全うすること、全力を出し切ろうとする気持ちという自立が、お互いを支えあうことに繋がるということが形になり始めているのではないだろうか。
「本当にこのトーナメントを通して、一人一人が支えあって出来ている素晴らしいチームだということを再確認できた」(♯4田上)

今週土曜日に行われる早慶戦、9月から始まるリーグ戦、インカレへと続いていく。
今回の優勝はこれからの戦いに向けて、良いスタートラインとなったはずだ。ここで得た自立・支えあいといった感覚と勢いという収穫を、今後に活かしてさらなる飛躍をすることを期待している。

文・写真 阪本梨紗子
取材 阪本梨紗子、金武幸宏、井熊里木