【500号Project 伝―慶應の足跡―】映画監督 大友啓史氏

あなたは「伝」という漢字に何を思うだろうか。伝達、伝説、伝統…。今年7月に迎える塾生新聞500号を記念して、「伝」をテーマに社会で活躍されている慶應義塾と所縁ある人物に焦点をあてていく。創刊500号の今回は「龍馬伝」「ハゲタカ」「るろうに剣心」の監督も務める大友啓史氏だ。

***

■ 大友 啓史(おおとも けいし)  1966年岩手県盛岡市生まれ(48歳)。慶應義塾大学法学部卒業後、90年NHK入局。秋田放送局、ドラマ番組部を経て、97年LAに留学。帰国後、連続テレビ小説「ちゅらさん」シリーズ、土曜ドラマ「ハゲタカ」、ドラマスペシャル「白州次郎」大河ドラマ「龍馬伝」などの演出、映画『ハゲタカ』の監督を務める。12年8月『るろうに剣心』公開、13年3月『プラチナデータ』公開。2作連続大ヒットに導く。
■ 大友 啓史(おおとも けいし)
1966年岩手県盛岡市生まれ(48歳)。慶應義塾大学法学部卒業後、90年NHK入局。秋田放送局、ドラマ番組部を経て、97年LAに留学。帰国後、連続テレビ小説「ちゅらさん」シリーズ、土曜ドラマ「ハゲタカ」、ドラマスペシャル「白州次郎」大河ドラマ「龍馬伝」などの演出、映画『ハゲタカ』の監督を務める。12年8月『るろうに剣心』公開、13年3月『プラチナデータ』公開。2作連続大ヒットに導く。

「信頼」は欠かせない

8月1日に京都大火編、9月13日に伝説の最後編の2部作が公開される映画『るろうに剣心』。監督は大友啓史氏だ。NHKでドラマ『ハゲタカ』や、大河ドラマ『龍馬伝』といった作品の演出を手がけ、現在は『るろうに剣心』シリーズなどで映画監督を務めている。インタビューで謙虚な人柄、「人に伝えたい」という思いに迫った。

慶大を卒業後、NHKに就職した。当時から「何か作るのは好き」だった。ディレクター部門で採用されると、ドキュメンタリー製作の下積み時代を過ごす。その後、ドラマ制作に関わる機会を得ると、「やっていないことをやりたい」と思い、その制作に没頭した。

ノンフィクションから、フィクションへの転身。一般的に見れば正反対に思える。しかし、「フィクションで起こることより、世の中に起きていることの方が進んでいる」。現実の時代、世間の人たちの考えに追いつき、世の中に必要な作品を作る。「フィクションを作る人間がフィクションの中に籠ってはいけない」というのが作品作りの信条だ。

また、作品作りにおいては「信頼」が欠かせない。多くの時間を割いてくれるスタッフはもちろん、信頼がなければ、映画への出資者も集まらない。「信頼」がなければ、キャストに自分の思うように演じてもらうこともできない。そういった「信頼」の築き方はドキュメンタリー時代にさかのぼる。

取材者と取材相手の関係は取材者主体ではない。日常にカメラが入っていくのは取材相手のプライベートを侵すことだ。「信頼」は欠かせない。介護の取材では、それを良く思わない家族もいる中で介護を手伝い、体験を共有することから始めた。床屋のドキュメンタリーでは実際に髪を切ってもらい、食事まで共にして信頼を得た。他人と心を通わせる信頼がドキュメンタリーには不可欠だ。

作品作りの姿勢は一貫して謙虚だ。「人に見てもらう前提」でどう伝えるか考えていく。作品を作る一番の理由は観てくれる人に「感動してもらいたい」からだ。現実に起きている面白いことに謙虚にアプローチして、世の中に必要なことを考え、フィクションで観客に問いかけている。

ただ、伝えたいことや主義を押しつけるつもりはない。高尚なものを作りたいわけではない。誰にでも楽しめるものを装いつつ、伝えたいことを「ちょっぴりにじませていく」。

また、映画を撮るにはビジネスとして成り立たせなくてはならない。誰が、どういう理由で出資してくれるのか。何をすれば、好きなことをやれる可能性が増えるのか。プロデューサーの視線も持つことで監督業だけに留まらない。「限られた時間、予算の中で結果を出す」のがビジネスであり、その成功が次につながる。

目指すのは確実に作品を残し、継続して人に伝えること。作って終わりではない。それには責任がともない、「批評を受ける覚悟」も必要だ。しかし、それを謙虚に受け入れて、次の作品に活かすことが出来る。だからこそ自信を持って言える。「面白いから観てください」と。  (中澤元)