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Short Shorts Film Festival 2005~主宰者 別所哲也氏インタビュー

日本で初めて本格的な短編映画をフィーチャーする映画祭として誕生した「Short Shorts Film Festival」。今日、日本においてもショートフィルムに対する関心が非常に高まっているなか、第一回開催時から海外から高い評価と注目を集めている本映画祭。主宰者は慶應義塾のOBでもある俳優の別所哲也さん。今回本紙ではショートフィルムと「Short Shorts Film Festival」(以下SSFF)の魅力について、別所哲也さんにインタビューをおこなった。

 ——なぜショートフィルムで映画祭をしようと思ったのですか
最初に出演した映画がハリウッドのオーディションで合格したもので、アメリカのロサンゼルスに一年ほど滞在しました。それ以来、本格的に俳優の仕事をやらせていただいているんですが、その頃知り合った人たちがきっかけで、九十七年にアメリカに三ヶ月程戻って現地の映画関係の方たちと交流する機会があったんです。その時にショートフィルムの上映会があったので、参加してみました。それまではショートフィルムって実験的で鑑賞の対象ではないものと思っていたんですけど、非常にエンターテインメント性があって面白くて。映画って別に長くなくてもいいんだと、他にも色々感じることがあって、それで日本に紹介したいと思って九十九年に映画祭をスタートしました。

 ——ショートフィルムのどういうところにエンターテインメント性があると思いましたか
長編映画だと一つの作品の中に恋愛、アクシデント、アクションなど色々な要素があってあらゆる方向から面白いものを作っていくんですけど、ショートフィルムはワンシチュエーション・ワンメッセージみたいなものが多くて、なによりも作家性が反映しやすいんです。もっというと、新しいテクノロジー、新しい映画的な手法が試されていたり、未来に向けた面白さが凝縮されている、そういうところが魅力ですね。

 ——どういうイメージで映画祭をやろうと思っていましたか
僕が始めた九十九年には、あまり「ショートフィルム」っていうワード、概念そのものが根付いてなかったので、ショートフィルムのミュージアム、展覧会的な要素を打ち出して啓蒙活動をするというのが大きなミッションでした。同時に映画祭そのものが持っている性格付けとしては、ロバート・レッドフォードがやっているサンダンス映画祭をモデルケースにしています。若手の俳優の卵や映画監督があつまる場所で、僕が行った九十八年にはベン・アフレックやクリスティーナ・リッチとか、今でこそ有名になっている人たちがコーヒーショップでコーヒー片手にショートフィルムや映画について語り合っている、アットホームな雰囲気だったんです。僕がやる映画祭も、ハンドメイド感のある血の通った映画祭にしたいというのがひとつの目標でした。

 ——第三回の時の「原宿クリーンアップキャンペーン」もそういった趣向から考えたことですか
そうですね。僕らは「スイーパーズ」という言い方をしています。これは、映画祭というものがそれぞれの街の一部になることが非常に大事なことなのですが、海外の映画祭も日本の映画祭も、より地域のコミュニティの人たちと交流するにはどうしたらいいかというのがひとつ大きな命題です。僕たちの映画祭は原宿の町内会や商店街の皆さんと交流があって、なにか一緒に出来たらいいなというのがあったんです。当時来日してもらった映画監督たちの声で、なにか貢献したいというのがあって。じゃあゴミを拾って街をきれいにしようと。今でもこれは毎年恒例になっています。

 ——今年で七回目を迎えるSSFF。フェスティバルの評価の変化について感じていますか
感じますね。始めた当時は短編映画にどういう価値があるのか、意味は何なのかとかすごく言われていた時代なんですが、年を重ねるごとにショートフィルムに対する認知が高まって、その価値を認めてくださる一般の方も増えてきています。昨年はアメリカのアカデミー賞の公認映画祭という認定も受けたりして、すごく社会性を帯びた大きな国際映像文化交流事業になったなと思います。

 ——ショートフィルムの可能性とは
結論から言うと、あらゆる方向のものがビジュアルアートとして集約されていくと思うんですけど、そのジャンル、意味合いというのは多岐な形になっていくと思うんです。だからショートフィルムというものを定義づけするときにもいろんな形がある。僕らの映画祭は二十五分以下、カンヌ映画祭だと四十分ぐらいでもOKとか。どこまでをショートフィルムと呼ぶかというのもこれからの大きな定義の議論でもあると思うんですよ。同時にミュージックビデオ的な世界とか環境ビデオ、クラブとかラウンジで壁にうつるモザイク画のようなビジュアルアートをショートフィルムと呼ぶかどうか。ショートフィルムの捉え方は非常に多様性を孕んでいて、逆に言えばチャンスがある分野。僕たちは作家性のある、ストーリー性のあるものをショートフィルムと呼びたいと思っているんですね。テクノロジーそのものは限りなく進歩していくと思うんですけど、根本的なストーリーテリングは人間が昔からずーっとやってきた知的作業なので、そこが一番本質的なものではないかと。そのうえで、僕らは「ビジュアルビークル」って言い方をしているんですが、映像がひとつの牽引者になってある情報を運ぶ、それがショートフィルムのもつポテンシャルであって、エンターテインメントとか教育といった一旦分割されていったジャンルのものを統合してくものになっていくんではないかと、勝手に思っています(笑)。

 ——学生の作る映画はどうしてもショートですが、悪いイメージではないですか
いえ、そんなことはまったくありません。むしろ新しい発想や感覚だったり、新しい技術とともに試みることは学生の中で生まれる発想だったりするんです。僕らがどっぷりつかっている映像世界だと、勝手に予定調和なルールができてリフレッシュできない。そういうことに光をあてるのは学生さんたちが作る映画や発想だったりすると思うし、そういうものであって欲しい。

 ——本年度のSSFFの見所を教えてください
今年はなんといっても二つの映画祭の兄弟開催です。SSFFインターナショナルとSSFFアジアが同時開催、これを僕らは兄弟開催と呼んでいるんです。アカデミー賞の公認映画祭になったので、ここからグランプリをとった作品がアカデミー賞のノミネート作品になる可能性があるという道筋ができたことが、大きな目玉です。作品そのものは、今年は「メキシコ特集」で、「ハリーポッター」のアルフォンソ・キュアロン監督の若かりし頃の作品だったり、ガエル・ガルシア・ベルナルの出演しているショートフィルム等が目玉です。もちろん世界中から集まった公式プログラムの中から、自分の好きな作品を見つけていただくのがこの映画祭ならではの面白さだと思います。劇場で見るだけの映画と違って監督たちが来日するので、じかに質疑応答できたり、気が会えばお茶を飲みながら映画で会話できたりするので、そういった映画祭ならではの交流を学生の皆さんに味わっていただきたいです。

 ——ありがとうございました。

(聞き手/構成 大賀洸・平良沙織)

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